以前、TVでこの映画の基となった事件を見たことがあり、絶対に観ようと楽しみにしていたグッチ家のお家騒動。こうやって観ると、例えパトリツィアが居なくても遅かれ早かれグッチ一族は崩壊していたんじゃないかと思えた。
父親の会社で経理を担当していたパトリツィアと経営の才はなかったマウリツィオ。アルドの拡大路線で価値を落としたGUCCIを、もしかしたらパトリツィアは立て直せたかもなとは少し頭を過ったけれど、でも学がなく立ち回るのが下手だったパトリツィアと、どうしても“ぼんぼん”気質だったマウリツィオでは、やっぱり無理だったろうなとも思った。
終盤になるにつれ、初めてマウリツィオが名乗った瞬間のパトリツィアの目がどんどん強く思い出されてきてしょうがなかった。閉じたドアの向こうでパトリツィアはどんな顔をしていたのだろうと思ったけれど、でも例え恍惚に酔いしれていたとしても、パトリツィアにグッチ家の血は1滴も流れていない。パトリツィアがGUCCIに執着すればするほど、その厳然たる事実が濃くなる一方のようで、それがどうにも憐れだった···。
GUCCIの魅力に取り憑かれた女性に翻弄された創業者一族の末路。―こう言っちゃ何だけど、面白かった。
#8_2022
