ぎー

バズ・ライトイヤーのぎーのレビュー・感想・評価

バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)
3.5
【2022年ヒット作特集9作品目】
「無限の彼方へさあ行くぞ!」
流石ピクサー!というような映画だった。
確かにウルトラスーパーヒットしなかったかもしれないし、大傑作ではなかったかもしれないけど、しっかり楽しかったし、綺麗にまとまっている。
多様性を受け入れること。失敗を許容すること。皆で協力すること。
メッセージがしっかりと伝わってきた。

スピンオフ作品とはいえ、『トイ・ストーリー』の世界観に触れられるのが嬉しい。
ウッディとかアンディとか何とかしてちょっとでも出てこないか期待してたけど、それは無かったけども。

ピクサー作品らしく、気づいていない箇所も含めて名作やピクサー作品へのオマージュに溢れた作品だった。
個人的に強く感じたのは、本作のAIのIVANの『2001年宇宙の旅』の人工知能HALに対するオマージュ。
現代の映画にとっても、アニメ映画にとっても、『2001年宇宙の旅』はSF映画の金字塔なんだな。

スピンオフ作品ということもあって『トイ・ストーリー』とは全く世界線が異なるものの、バズ・ライトイヤーのキャラは本編を踏襲しているのが嬉しい。
熱すぎるくらい熱く、真面目で、話が長く熱がこもりがちで、任務をこなしながら独り言を言う。
逆に言うと本編の世界線を引っ張っているのはこのキャラクター設定ぐらいであるにもかかわらず、すぐに『トイ・ストーリー』ワールドに僕らが浸れるくらい、『トイ・ストーリー』ワールドは確固たる世界観を持ってるんだろうな。

この映画はあるバズの成長物語。
どんなスーパーヒーローでも、1人では成し遂げられない。
1人では成し遂げられないことも仲間と協力すれば成し遂げることが出来る。
自分の力を過信することなく、仲間との協力の大切さを胸に、物事に取り組むことが大事。

IVANが悪意がなく、少しだけドジなAIな描写をされているのが面白い。
AppleのSiriを連想させる。
少し昔の映画だったらこういうAIは悪意を持って描かれていた。
もうAIと共生する世界になっているということだろう。

そういう意味では、癒し系猫型ロボットソックスが滅茶苦茶重要なキャラクターだった。
全然ただの癒し系ではない。
友人であり仲間。
そして誰よりも有能。
共生するだけでなく、AIやロボットが仲間となり友人となる世界がもう目の前まで来ている。

ヒロインのアリーシャは女性科学者と結婚し、子供を授かった。
本作がすごいのは、そのこもを当たり前のこととして描いていること。
多様性に焦点を当てた最近のディズニー映画は、むしろそういった多様性要素に焦点を当てて強調していた。
本作は全然違う。
もう多様性は当たり前のことで、背景に過ぎない。
その描写スタンスが素敵だった。

敵としてザーグがしっかり出てくるのも嬉しい。
ザーグはまさかのバズ本人。
過去の自分、他人を受け入れない自分、自分の考えにいつまで固執する自分との対決。
非常に分かりやすい構図だった。

バズの新しい仲間たちはかなり個性的。
正直初見でそんなに活躍できる仲間だとは映画を自分も思わなかった。
人は見た目とか印象では決まらない。
何がどう発揮されるのか、なんてことは誰にも分からないということ。

そしてこの映画の特徴はとにかく主要登場人物達が皆重大なミスを次々とやってしまうこと。
注意不足のモーが警報システムを作動させたり、少し抜けているイジーが燃料タンクを放出したり。
バズもAIのアドバイスを無視して船を墜落させているし、ダービーはそもそも罪を犯して逮捕されている。
誰しも失敗はするということ。
失敗に向き合うこと、他人の失敗を許容することが大切だということ。
そしてきちんと向き合い、仲間と取り組めば取り返せない失敗などほとんどないということ。

まさに敵キャラのザーグが失敗、過去の過ちに対するスタンスが真逆だった。
自分の失敗、過去の過ちをあくまでも無かったことにしようとしている。
そのスタンスは必ず誰かに不幸を強いるし、そもそもなかったことになどできない。

⭐︎1番印象に残っているシーンは、バズ達がザーグの船でザーグ一味と戦う場面。失敗にきちんと向き合い、一団の仲間となったバズ達は最強だった。
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