イベリー子豚

プリズナーズ・オブ・ゴーストランドのイベリー子豚のレビュー・感想・評価

2.5
スチーム・サイバーパンク、COOL JAPANを
履き違えた奇人・園子温が
「俺のセンスって尖りきってるよなぁ」な
自己満足的蜷川実花風色彩感覚で
ド派手なセットや豪華な衣装(ニコちゃん以外)に
製作費をたっぷり無駄遣いした
新訳『怒りのデスロード』×『ロビン・フッド』。
完成したのはG(ゲロがでちゃうよ)級クソ映画。


予告の時点で
「これは地雷まったなしだなクレイモアちゃんだ」と
皆さん気付いていられると思いますが
とんでもない。
原爆でした。悪い意味で。リアルに。


「このクオリティが《園子温イズム》なんだよ」
なんて言ってるすっとこのどっこいさんには
申し訳ないですが
観客のお金と時間を使う以上、最低限のレベルは
必須条件だと思います。


サムライタウンはアメリカの傀儡政府のメタファー
とか言われても
つまらなさの言い訳にしか聞こえません。


仮に「イヤなら観なきゃいい」なんて意見は
「もしかしたら他人には合わなくても自分には
刺さるものがあるかもしれない」傑作に出逢える
奇跡をも否定する思考停止マインドだと思うので
悪しからず。

元からストーリーや設定は破綻に崩壊は
予期していてもここまでつまらないのは
流石に擁護出来ないですね。

「振り切ってるのに笑えない」はダメ絶対。

覇気もない、テンポも悪い、ポップさもない
「もう中学生」や「ZAZY」のネタですよ。


「コメディにこそダークでシリアスな
メッセージが潜んでる」がやりたいなら大前提、
面白くないと。


こんだけお粗末なら流石にアクションは
キレキレであってくれ……!と言う一縷の望みも
早々に打ち砕かれるし、
エンドロールまでこちらの堪忍袋との耐久力勝負。


まず役名HEROのニコちゃんの動きが
鬼モッサリすぎなのよ。
ここは完全に別人でもスタントバシバシ入れるべきだよ。
TAKさんも実戦・暗殺向きだから
スクリーン映えしないし。

ブッテラちゃんもナイフ脚じゃないなら
起用の意味が分かんない。このストーリーなら
日本人でよくない? 

根本の問題は園子温監督が
アクションのプロじゃないこと。
バイオレンスや血生臭い作品が得意なのと
スタイリッシュなぶつかり合いをカッコよくとるのは
全然違うことがよく分かりました。
三池監督の『初恋』が最高なのは
『クローズ』はじめケンカ・殴り合いアクションの
下地があったからなんですよね。


この通り
頼みの戦闘シーンはからきしだから
あとは会話やテンションで楽しませて欲しいところですがその祈りすら届きません。


「タマタマ」に爆弾仕掛けるとか
金的してチーンとベル鳴らせるとか
ニコちゃんにママチャリ乗せるとか
学級王ヤマザキのお笑いを恥ずかしげもなく
繰り広げる、時代錯誤・見当違いな感覚も
酷いのですが
スピード感のない展開、平凡なカット割りも
地味に退屈で眠気を誘います。

敢えてのワンカット長回しやクローズアップ、
FPSアングルなど挑戦的な画作りもなく
いたって普通の構図のクセに急に入る舞台演劇。

これがダサさに拍車をかけ止まることを知りません。


この手のキワモノ変態ニッチ作品は
「皆でツッコミ入れながら観るのが醍醐味」の1つ
だと思いますが
このTSUSHIMA匂わせタイトル野郎は
クレームや不満はあれど好意的なツッコミなんか
出てきやしないでしょうね。


しかし、どこを切り取っても全く良いところが無い
地獄の水虫のような映画ですが
遊女やゴーストランドのエキストラの女性たちだけは
異様に美女揃いです。イモータンジョーの妻?
謎です。

あの色街の退廃的で毒々しい
歌舞伎町と吉原(どっちも行ったことない…)の
最終形態みたいなイカれ具合は唯一のグッドポイント。




まぁ脚本は向こうさんのようだし
園さんは体よく押しつけられた
雇われパンダ的ポジションなのかもしれませんが
それにしてもこんな誰も納得しない映画は
作らないでいただきたいです。


折角、『激レアさん』が二人も出演されてるので
願わくば若林さんの脚本チェックがあれば
こんなことには……。


とりあえず園監督は
チャップリンみたいなオシャレな社会風刺に
タランティーノやジョージ・ミラーの真似は止めて
白石・三池監督とのセンスの違いを認識して
『カラーアウト・オブ・スペース』
『マッド・ダディ』
『キック・アス』をもう一度鑑賞して
正しいニコラス・ケイジの用法・用量を勉強することから始めて欲しいですね。


あと僕はエンドロール後まで待つ心の余裕すら
失って引き上げたんですけど
最後の良心みたいなオマケ映像はありましたか??