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アポロンの地獄のavantgardeのレビュー・感想・評価

アポロンの地獄(1967年製作の映画)
3.7
映像の美しさが際立っていた。
パゾリーニの作品はどれもが非常識で、まるで観る者を困惑させるのが狙いであるかのような奇想天外さに満ちている。
だいたい、主役のフランコ・チッティにしたって大変なブ男で、なんでこんな役者をわざわざ主役にしているのかの意味も不明。__このフランコ・チッティ、パゾリーニの映画では『乞食』(アッカトーネ)でも主演していた役者だが、『ゴッドファーザー』ではほんのチョイ役で出ていたぐらいのイタリアでの知名度はおそらくそんなに高くないような人物に思える。__その相手役にシルヴァーナ・マンガーノという絶世の美女を添えるというやり口に、パゾリーニの既存性への反抗心が窺えて、つい笑いがこみ上げてしまうのである。
映画の中の衣装やセットにしたってお粗末な感じだし、内容にしたって、ふざけたような演出と思われても仕方のないものばかり。パゾリーニ的世界に精通していない人にとっては不可解な映画としか映らないだろうと思う。
しかし、この作品の真髄とも言える映像美の素晴らしさはシュールレアリズムの絵画のシーンそのもので、そういう方面のマニアを圧倒的に魅了してしまうものなのだ。
かくゆう私もそのひとり。パゾリーニ作品のアクの強い臭気に悪酔いさせられながらも、ついやめられずに観続けてしまうのだ。
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