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アウシュヴィッツ・レポートのsimpsonsのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

we are already dead.
we do it for those who live.

私が初めて観た映画はシンドラーのリストだったと母は言う。(私はその前にアラジンを観ていたと思うし真偽は不明)
小学校へ上がった頃くらいだったと思う。子供にそんな映画を見せてという議論もあるかと思うが、問題は、子供にも見せられないような残虐なことが現実にあったということだ。内容の詳細までは覚えていないが、私は戦争や虐殺は絶対にしてはいけないと頭だけでなく感覚で叩き込まれていると思う。それに子供が観てもあんなのおかしいって分かる。
その時は大きな映画館で満席だった。
今ではこういった映画はあまり観られなくなった。現実がしんどいのになぜそんな暗く辛い映画、しかも実話を観なければいけないのかと。
最近、現実の反対は夢や理想ではなく、快楽なんじゃないかと思うくらいだ。
映画には、楽しむための映画と、観なければならない映画が存在すると思う。

ナチス関係の映画も沢山観てきたけれど、こんな2人がいたことは知らなかった。
あの収容所の中で記録を残し(紙と鉛筆すら手に入れるのが難しい)、32ページにも及ぶ詳細なレポートを書き上げたのは凄いと思う。その後2人はどうなったのだろう。
「殺人者と交渉するな!」というセリフや、他の棟の娘が連れてこられて殺された時に、「今の言葉はポーランド語でスロバキア語じゃない!だから大丈夫だ」ってなったときに、「もしもそうなら既に殺されているということだ」と冷静に判断していたのもめちゃくちゃ賢い。

戦争という極限状況の中で戦局が悪くなりナチスも焦りや不安で追い詰められて更に余裕が無くなって当たり散らす様子が見てとれる。
息子を東部戦線で亡くしたからと、頭だけ出して生き埋めにしてその上から馬で踏む残虐な殺し方。
どういう人がそんなことできるんだろう。サイコパス?命令されて嫌々やっているようには見えない。

点呼責任者は打ち殺され、他の同じ棟の囚人たちも極寒の中ずっと立たされて、何人か立ちすんだまま亡くなっていた。

伝えること、知ることは本当に重要なことだと思った。
ただ、受け取ったらちゃんと判断し、行動できるだけの倫理観と能力を付けておきたい。
それに、あの森で出会った女の子のような行動ができる人間でいたい。そのために映画を観ているのだと思っている。

スイス、アメリカやイギリスからも見放され、なぜそこまでユダヤ人が迫害されるのか、元々宗教的な話や移民差別もあると思うが、ちゃんと調べたいと思った。
どんな国にもどんな世界にも色んな人がいるのに。
最後のエンドロールは納得だ。
人種差別も移民迫害もマイノリティへのヘイトも欲求不満、不安、恐怖、嫉妬が根源にあるのだろうけれど、世界的に今はポピュリズムが蔓延している。コロナで我慢を強いられ不安を煽られているから余計悪化している。分かっていてなぜ止められないのか。気付いていないのか。
最近似たようなテーマの映画が多く製作されているのも、多くの人が同じ様に繰り返されるのではという危機感を抱いているからだろう。
多分こういう映画を観て一人一人考え、出来れば話し合うことが地味だけど残された希望なんだと思う。

ホロコーストは無関心の産物

1941年
ユダヤ人法が成立
スロバキア政府は1人500ライヒスマルクの手数料をドイツに支払い、ユダヤ人の国外移送を実施
1944年
8月ナチスドイツ、スロバキア国に対し国民蜂起
9月ドイツ軍がスロバキア占領
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