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キャンバスのdm10foreverのレビュー・感想・評価

キャンバス(2020年製作の映画)
3.6
【誓約に背いて・・・】

日本人は諸外国からみると珍しい「パートタイム宗教民族」。
お正月は神社へ初詣に行き、近親者が亡くなれば大抵は宗派の違いはあれど仏教様式の「お通夜&告別式」。誕生日が来ればとりあえずケーキのろうそくを吹き消してプレゼントをゲットし、お盆になればお墓参りでお経をあげてもらう。でもハロウィンもキッチリ楽しむ。
そして待ちに待ったクリスマスは聖夜なんだか性夜なんだか・・・とりあえずイブに燃え尽きる恋人たち。
そして、結婚式はやっぱり大半は教会で♪タタタタ~ン♪っていうパターンが多いんじゃないかな?
かく言うウチもそうだったし・・・(因みにうちは浄土真宗らしいけど)。

でね、判で押したように「ヤメルトキモォ、スコヤカナルトキモォ、アナタハコノモノヲツマトシテアイスルコトヲチカイマスカ~?」って聞かれる。
外人の牧師さんがケント・デリカットのような日本語で。
で、何故かこっちまでつられて「ハイ、チカイマ~ス」とカタコトになってしまうという『真面目な人ほど気をつけてね』という法則(笑)。

でね、牧師さんが言うこの誓いの言葉の中に「死が二人を分かつまで・・・」っていうフレーズがあるんですね。
実はこれ、日本の教会ではあまり使われないフレーズなんだけど、アメリカなど英語圏の教会で式を挙げると牧師さんの言葉の中にはちゃんと入っていることが多い。

・・・でもさ。

「死が二人を分かつまで・・・」って、なんかちょっとドライだよなって気もする。
結婚の誓約は「どちらかの死によって離れた時点で満了」ってこと?
二人の愛ってそんなもんなの?
・・・やっぱりへそ曲がりなdm。

~~物語は、絵を描くのが好きだったお爺さんが最愛の奥さんを亡くなったことで気力を失ってしまい、カンバスに向かうことすらも出来なくなっているところから始まる。
最後に彼が手掛けていたのは、椅子に腰掛けた奥さんの後姿を描いた油絵。
奥さんを失った喪失感の大きさはなかなか埋まるものではなく、いつしか彼を絵から遠ざけてしまった。

でも、やっぱり心の底ではずっと奥さんのこと愛しているんだよね。
それは何年経っても変わるものじゃないのかもしれない。
だからこそ「今ここにいない」という現実と向き合うのが怖い・・・。

「後ろ向きの奥さんの絵」というのも、現実と向き合えないおじいさんの気持ちとしてうまく描かれていたし、ようやく現実と向き合えるようになった時に振り向いてくれる奥さんの光が優しく見えて、ちょっとウルッときた。

「死が二人を分かつまで・・・」

それが神様との誓約だとすれば、おじいさんもおばあさんも誓約を破ったのかもしれない。
でもそれは二人の選択。誰にも邪魔はできない。
二人の愛は死で分かつことなんか出来なかったんだから。

以前「ラーヤと龍の王国」で同時上映された「あの頃をもう一度」という短編アニメがあったんだけど、それにもちょっと通ずる部分もあって、自分や相手が段々と年をとってお互いのリミットというものを現実的に意識しだした時、相手を思う気持ちにまでリミットがあるなんてことはなくて、むしろ瑞々しい気持ちはいつまでも続くものだと思うし、そうありたいと思う。

それにしても、絵を描ける人って羨ましい。
人、動物、建物、風景・・・なんであっても「想い」がなければ描けない。
写真のように一瞬で撮れてしまうのとは違って、何日も何ヶ月も何年もかけて一枚の絵を完成させるって、それだけ想いがなければ描けないと思う。
若いころにスケッチブックとデッサン用の鉛筆を車に積んでおいて、いつでも描けるようにって準備だけはしてみたけど・・・1枚くらい描いて終わった・・・(はや!)。

やっぱり僕は「見る専」だ。
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