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クライ・マッチョのstanleyk2001のレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.3
『クライ・マッチョ』(Cry Macho) 2021

「そのうち軽いいびきが聞こえてきた。何と、志ん生は酔っぱらって、坐ったまま眠ってしまったのだ。客にもやがて気づかれ、笑い声が起こる。共演していた桂文楽(8代目)があわてて「志ん生は満州の疲れがとれておりません。なにとぞご勘弁のほどを――」と頭を下げると、客は文句も言わず、「ゆっくり寝かしてやれよ」という声がいくつもかかったという(結城昌治『志ん生一代(下)』小学館)

「クリントの旦那また『グラン・トリノ』と同じ話を語ってますぜ」
「いいじゃねぇか、語らせてやんなよ。年寄りは同じ話を何度もするもんじゃねぇか」

子供達と食卓につき自分が料理したフライドチキンを囲み愛する女性に手を握られて微笑むイーストウッドを観ているだけで良い。

やっとイーストウッドも年をとったんだなと思う。年をとったらストーリーが緩くて整合性もない観たい場面だけ繋いだ映画を作った監督は沢山いる。それはそれで良い。フェリーニもタルコフスキーも黒澤も宮崎駿もそうだった。

フェリーニや黒澤に比べたらちゃんとストーリーはある。

「クライ・マッチョ」を観てたら「ガントレット」(1977)を思い出した。ロードムービーという点と主人公がやられてばっかりという共通項がある。

「ガントレット」では執拗にセクハラ発言をやめない男性警察官を娼婦が冷静に皮肉だけでやり込める場面がある。この頃からイーストウッドは反マチズモを貫いてる。

老カウボーイがメキシコから恩人の息子を連れ帰る。このストーリーだと少年の成長が中心なのかなと思うが実は老カウボーイの人生が大きく変わった。こういうパターン破りも良かった。

余談
エンドクレジットに「Snake removable Technician」というのがあった。「蛇除去専門家」?
夜、車の外で寝る場面の撮影のために蛇をあらかじめ探しだしたり追い払ったりする仕事なのかな?
「バニシング・ポイント」のディーン・ジャガーを思い出す。世の中には色んな仕事があるものですね。
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