肉浪費Xアカウント復旧無理ぽ

マダムの肉浪費Xアカウント復旧無理ぽのレビュー・感想・評価

マダム(2019年製作の映画)
4.0
おばあちゃんは僕の女神
全"おばあちゃんっ子"にぶっ刺さる、祖母が生きてきた"女性性"と僕がこれから生きる受け入れなかった"男性性"のジェンダーの話をしよう、ドキュメンタリー

まず言いたいのは、「ホームビデオ」、「留守電」録り過ぎ問題(笑)
というのも、監督自身が映画監督を夢見た父親の影響が大きいのか、最初から目標をこのドキュメンタリー映画にしようという発想のもと取り続けた可能性がありますね。それくらい膨大な写真、ホームビデオ、音源(笑)
父親の短編映画がクラシックながら実に"それっぽい"映像に仕上がってるのも興味深ったです。

このドキュメンタリー映画は、なにもおばあちゃんとの親交を可愛らしく、ハートフルに撮った映画ってわけではありません。(それでも充分におばあちゃんっ子には刺さるやりとりの数々w)
内容としては、祖母が生き抜いてきたブルジョワ(成り上がりセレブ)階級の「家父長制」と「男尊女卑」社会と、監督兼孫(主人公)のアイデンティティとジェンダーの生き方に葛藤するLGBTQ社会の変遷を同時かつ対比的に撮り溜めた資料のもと送るドキュメンタリーです。

その写真と映像の膨大な量からか、オープニングのテンポよい写真の切り替えしに"洒落っ気"を感じるですよね。これは「ドキュメンタリー映画」としては、そういう人物、業界人を取り扱った以外のドキュメンタリーとしては珍しいことで、「一般人」を取り扱った実録なのに"ニ部構成"的な見せ方もあってグイグイと観せられるドキュメンタリーとは斬新な感覚です。

おばあちゃんは孫想いで、「女は…」というほぼ世界共通の女性を下に見、社会活躍を制限してきた時代を一般人としては切り拓いてきた1人に数えられるくらいの「実業家」。日本で例えるなら、"アパ社長"の元谷社長といった感じでしょうか?(それでも2回りは先輩世代)
見下される男社会を生き、恋愛・家庭面で苦労してきたことが綴られて、""それなのに""孫の「同性愛」事情には"保守的思想"に塗れているのが非常に興味深いんですよね。
斬新な考えを持ち、過去の「社会体制」に異を唱えて推し進んだ人が、「ジェンダー論」については"男、女、こうあるべき"という自らが立ち向かってきた「圧制側」に汲み側に周ってしまう皮肉。
この内容が示すのは、それだけ"LGBTQ+への理解、偏見が根深い"事を表していると思いますね…

監督自身も大学生になるまで、自分が幼い頃から初恋相手が「男性」であったり、同級生にいくつも興味を示してきたにも関わらず、自己を偽り、「バイ」のようなどっちにも足つかずの"中途半端"な恋愛遍歴を明かしていきます。
ここらへんの葛藤の語り口も、自分にはその気(け)がないとしても"生きづらさ"において充分に「共感」の平行線を辿ります。

そこで交わるべき愛してくれた祖母への自己の"性指向"の『告解』。
どちらも違う考え方のもと違う時代を生き、「生き方」を制限されてきた経緯を持つどこか似てると言えなくもない2人。
交わるか交わらないのか?それ以前に(ゲスな話w)ばあちゃんがあの世に旅立つ前に「告白」する日はくるのか!?
結末はお楽しみにw