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偶然と想像のギルドのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.4
【偶然は毒にも薬にもなり得る】【東京フィルメックス】
思いも寄らない出来事が起きた女性3人を映した短編集。

いよいよ東京フィルメックス&東京国際映画祭が開催しました!今年は一昨年/去年と比べてたくさん準備して、たくさん見ようと思っているので楽しみです!
その第1本目が濱口竜介監督の最新作で、濱口監督とキャスト陣のトークショー付きと至福のひとときを過ごせました!


そんな本作ですが、濱口監督の大好きなエリック・ロメールの短編作りから着想を得て作られた作品のようです。
実際に見てみると前作「ドライブ・マイ・カー」とは打って変わった明るさ・無邪気さを持ちつつ、深くに潜在する本質は「ドライブ・マイ・カー」の”人間の心の複雑さ”を描いている”沢山笑って沢山共感できる”映画でした。
日常生活でも起こりそうなドラマティックなファンタジーを映画に現出してて、そのどれもがクスっとなるようなシーンばかりで見てて楽しかったです!
劇場でも瞬間瞬間で爆笑したり、自分も吹き出しそうになるほど笑うシーンが多くあって見心地良かった(笑)

惚気話を聞いてて「あれ?この人ってもしや…?」とか、最近言われるハラスメントのする側/される側の考え方とか、エスカレータでたまたますれ違うとか…その辺を映画でやってみたら面白くね?という発想で生まれた本作で、結果として営みから会話のやり取りまでどこか共感できるポイントが多いのが見どころだと思います!

どこか溝口健二「雨月物語」を彷彿させる同一ショット内で文字通り(映像通り)世界が一変する様、小津安二郎「麦秋」のような距離感のコメディ…とどこか懐かしさを感じる技法もしれっと入っていて、映像を嗜む意味でも見応えあったかな。

本作は「偶然」を題材に人の価値観・生活の展望にどう変化が来るか?を映した作品で、その顛末はぜひとも12月の全国上映で目にして欲しいです。
この映画に登場する人はある意味「現代を生きる私達そのもの」だと思う。その人たちに捧げる人生/心の薬みたいな作品で、コメディタッチの皮を被った「ドライブ・マイ・カー」の”人間の心の複雑さ”を淡々と深堀りしていく所に凄みがあると感じました。
濱口監督の作家性(会話のやり取り、村上春樹「ドライブ・マイ・カー」「木野」)を堪能した、そんな映画でした。

みんなもぜひ見て欲しい!
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