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偶然と想像のkyokoのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.5
短編集というスタイルのせいか、これまでの濱口監督作品の中ではいちばん肩の力を抜いて観ることができたし、今まで見たことのないズーム使いも相まって想像以上に笑えた。

1話目:古川琴音ちゃんの繰り出す「暴力」がPASSIONの緊張感を思い出させる。正直、最初は真っ当美人の玄理ちゃんとイケボイケメン中島歩(抜け感が最高)との間にいて、彼女の童顔ぶりは少しだけ違和感を感じるのだけど、後半はこのバランスが絶妙なのだと思える。
2話目:渋川兄貴が繰り出す大真面目なくだらなさにとにかくゲラゲラ。いやー、枯れた兄貴も良いねぇ。いちばんコントだったけど、人間の深淵を覗くという意味ではいちばんホラーかも。
3話目:ハッピーアワーに似た優しさ。だれもがひとつくらいは心に忘れ物を残していて、それを回収するチャンスがこんな風に訪れたらステキだなあと思う。PASSIONでは交わる場面がなかった占部房子と河合青葉ががっぷり四つに。

偶然が生んだ想像は必然となって彼女たちの背中を押す。シューマンのピアノ曲の優しい音色を聴きながら、ちょっと泣きそうになった。
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