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対峙のHKのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
3.3
原題は“Mass”。マスコミのマスで、多数、集まり、大衆の、などの他にキリスト教の儀式やミサといった意味もあるようです。
ある高校で起きた銃の乱射事件で共にわが子を失った被害者夫婦と加害者夫婦が6年の時を経て対峙します。

とても評価が高いようですが、正直言って、なぜこの二組の夫婦がこの時期にこのような対峙(Mass)の機会を持ったのか、私には理解できませんでした。
目的もハッキリわからず、なんらかの決着がついたとも思えず、ただただ二組の夫婦と共に苦痛の時間を過ごしたといった感じでしょうか。

4人の演技合戦はたしかに鬼気迫るものがありました。
どちらの夫婦からも自分たちの思いをハッキリと言い表せないもどかしさや戸惑い、時に制御できなくなる怒りがとてもリアルに、痛いように伝わってきました。
でも、その痛みを共有してもなお、この会合の意味がよくわかりません。

お互い、これまで言いたかったけれど言えなかったことを吐き出す場が必要だったのでしょうか。じゃあお互いにこれで気が済んだのでしょうか。

このように感じるのは、私がキリスト教の宗教観で重視されるところの“赦し”というものを理解できないせいもあるかもしれません。
私は“赦す”と言う言葉が、どうしても上から目線に感じてしまい、何様に赦す権利があるの?と思ってしまいます。

私は自分の間違いに赦しを求めるのは甘えだと思うし、誰かの赦しが欲しいとも思いませんから、本作のラストの許すと言う言葉に傲慢や侮辱などの悪意すら感じてしまいます。
この時点でもう私がキリスト教を根本から全く理解していないということになるのかもしれませんが。

私には本作のラストに一筋の光明も見いだせず、この“儀式”に本当に何の意味があったのかわからないままです。
HK

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