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対峙のギャスのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
3.5
面白かった、と軽くは言えないが最後まで目と心が離せない映画だった。噂で高評価だったので、前知識なしで観れるように予告なども見なかったのはよかったと思う。

"ある立場"の人が"ある言葉"を"ある人"に言いに行く。何のために?

どっち側なのか、何が起こったのか。
始めは観客には何も知らせないまま、じっくりと会話によってのみで明かされてゆき、その言葉とその感情が引き出されるラストまで、緊張感が張り詰める。
言葉と感情の重みが観客にのしかかり、後味は切なく苦しいがかすかな希望も見えたと思う。

ネタバレ
加害者の父親には独善的家父長的な像が垣間見えるところもあり加害への一つの要因にも思われたが、なんにせよどちらの親も子供に対して真剣に愛して育てていたことに違いはない。どこで何がどう間違ってゆくのかは神のみぞ知るとも言える。教会で話し合いが持たれたことも皮肉にも思えるくらいだ。

「許す」と相手に言う、それ以外にこの地獄から逃れ、前に進む道がないから、、。その言葉を観客も理解できるまでには、やはりこれだけの会話と感情(演者のチカラ)が必要だと思えた。

(ただ、ここまでの感情にたどり着くのはやはり子供への愛情がしっかり存在していたから。ある意味良い家族同士の話だ。
貧困でネグレクトで虐待で、、などで起きる事件の地獄から何とかして前に進むのはやはり輪をかけてかなり難しいと思わされる)


追記
たまたま見た100分で名著の「思い出のマーニー」の回で、加藤シゲアキが「色々苦しかったことや恨みをいったん許すことにしたらやっと前に進むことができた」とこの映画と同じことを言っていて、やはり許すという行為は相手のためでなく自分のためでもあるのだなと腑に落ちた。
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