ぶみ

白い牛のバラッドのぶみのレビュー・感想・評価

白い牛のバラッド(2020年製作の映画)
3.5
男はなぜ、私の前に現れたのか。

ベタシュ・サナイハ、マリヤム・モガッダム監督、脚本、マリヤム・モガッダム主演によるイラン、フランス製作のドラマ。
殺人罪による死刑で亡くなった夫が、実は冤罪だったとわかった主人公のもとに、夫の旧友と名乗る男性が登場したことから巻き起こる出来事を描く。
耳の聞こえない娘を持つシングルマザーの主人公を、監督、脚本も兼ねたモガッダムが演じているが、冒頭から描かれるのは、法律や風習、文化も含めてイランにおける女性の何とも生きづらい立場。
そこに、日本同様、死刑制度が存在し、かつ死刑大国とも呼ばれるイランの同制度が根底として横たわっているため、終始重苦しい展開が続くことに。
また、劇伴も廃されており、日常音が常に響いてくるため、まるでドキュメンタリーを観ているかのよう。
物語は旧友と名乗り主人公に近付いた男性の正体が明かされるというサスペンスタッチで進行していくが、辿り着いた結末は衝撃的かつ考えさせられるものとなっている。
製作国であるイランでは政府の検閲により、正式な上映許可が下りていないという現実が、本作品の描く光景がイラクの本当の姿であることに拍車をかけており、淡々とした映像の中に、本作品に込められた迸るような熱意が伝わってくる一作。

これも神のご意志でしょう。
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