Qちゃん

ボーはおそれているのQちゃんのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.7
毎度ながら、アリアスター作品って、家族イヤみがすごい。愛憎と束縛と、逃げられない息苦しいがんじがらめ感がすごい。

元々の不安障害に、怪しい処方薬に、外的要因の過剰なストレスに、ドラッグにと、そこここに幻覚伏線張りまくってあるせいで、何がどこまで本当か幻覚か、実際に何が起きてるのかが分からなくなってる。

けど、今回のフォーカスは、母子の複雑な愛憎の思い。母親の重い愛の支配。

息子は、お母さんを愛してるから期待に応えたくて、ずーっと頑張ってるのに、ママは満足してくれない。いつも後ろめたさと、自分が至らないせいで愛されてないという思いと悲しみを抱え、同時にそこまで罪の意識を植え込んでくる母に殺意が芽生えるほどの怒りと憎しみも抱いている。
でも、逃げられない。

母親の羊水を示す水がひっきりなしに出る。水から生まれ出て、水と共に生きて、水に帰っていかざるを得ない。

母親の方も、まごうことなく息子を愛してるけど、居ない父親の身代わりにするかのような、なんだか歪んだ接し方。そして、こんなに愛を与えてるのに返してくれないという苦しい気持ちから、愛しさ余って憎さ100倍に。

アリアスターの描き方はそりゃもうえげつないんだけど、でも、これ結構ありがちな感情で、まさかなんだけど本作観ながら息子の母親として結構自省した。。😓 「こっちはこんなに可愛がって一生懸命人生捧げて来たのに、なんで愛を返してくれないの?!」の気持ちは、分かりみが過ぎる。子供からしたら、照れ隠しだったり、ボーみたいに子供なりに一生懸命やってたりするんだろうけどね。もっとそこを拾って愛を実感すべきだよね。。反省だよ。

ついこの間も次男に「ボクはパパから生まれた」と言われて、地味にグッサリ傷ついて「命かけてあんなに大変な思いして産んだのに!!」と5歳児相手にガチ怒り&ガチ泣きした大人になれない母親でごめん。。😱

クセになるような、美しくも不穏な映像表現も相変わらず。ポスターにも出てた、天使の後ろ姿のシーン、クる。プレステ2の欧州版CMみたい。↓ラストに出てくる笑う女の後ろ姿
https://youtu.be/U1qKBs67QAU?si=45WtVqhIqEZhb-kq
母親が屋根裏の梯子を出す夢のシーンの切り取りも地味に印象的で、夢に出そう。お風呂場の夢で母の声が人外な場面も含め、ちょっとターセムシンの「ザ・セル」ぽい。

ご本人も周りも言ってるけど、いろんな映画へのオマージュや練り込みがあって、監督自身が影響を受けているというメタと共に、それらすら、ボーが自分が過去見た映画と自分の状況を絡めて幻覚を見ているからじゃないかと、読めたりもする。

プレイタイム、オズの魔法使い、サンセット大通り、スターシップトルーパーズ(これは酷い😅)は結構露骨に。本作の製作発表時のタイトルは「Disappointment Blvd.」(失望大通り)だって。デヴィッドリンチのマルホランドドライブやインランドエンパイア的な、現実と交錯する内面の幻影を扱った作品にも影響受けてると思う。屋外劇場でアノ人が話しかけてくるシーンは絶対ロストハイウェイからの引用。外科医の不穏な同居人の男の表現は、アレックスガーランドの「MEN同じ顔の男たち」みがあった。

あと、急に出て来たネイサンレインに吹き出したが、息子の名前がネイサンだったり、本人の名前がロジャーで、ネイサンレインの大ヒットミュージカル「プロデューサーズ」に出てくるインパクトある役の名前だったりしたのも、昔観たボーの幻覚的な伏線なんだろうか。。

観てないけど、シリアスマンやアフターアワーズも言われてるし、関連の人も出てるみたい。観とこ!
Qちゃん

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