Habby中野

ボーはおそれているのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

映画が終わってふらつく足で、パンフレット買おうと思ったら売店が閉まってて、まだ21時半なのに、シャットダウン、という感じがして思わず席を立ちそうになった。もうロビーにいるのに。
ボーは恐れている。何を?死を。他者に侵害されることを。目的地に辿り着けないことを。過去の憧れに手が届かないことを。傷つけられることを。追われることを。時間が流れることの冷酷さを。憧れた過去が荒ぶれた現実として現れることを。バイアグラごとく肥大化した欺瞞を。すべてが劇であることを。閉ざされた怖しい記憶が開かれることを。親に手をかけることを。裏切られることを。母に突き放されることを。絶望の中苦しんで死ぬことを。
悪夢、というよりも人が悪夢と呼ぶものの具体的な姿の饗宴。根源的で過敏な性格を持つパラノイアが身体を完全に支配した時、そこでは悪夢はもはや夢ではなく、現実そのものとなる。この、紛れもない今ここが、悪夢だと言われたら、人は醒めることに希望を持てるのだろうか?あらゆる形の死を乗り越えてたどり着いた歪んだ裁判、その果てに水面で蓋をされた棺桶。反転したその向こう側にあるのがこちら側なのか、それとも、ここは棺桶の中か。
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