ダニエル・シュミット。恥ずかしながら、お初です。
こちらはポール・モランが原作。読んでおりませんが。モランはポール・クローデルと親交があったようで、クローデルが駐日大使だった時分に来日してるんですね。あ、クローデルは、四谷にある日仏会館の創始者ですね。こちらもモランと同様、外交官でありながら戯曲家で小説家、お姉さまは、かのカミーユ・クローデル、ロダンの愛人ですね。
もうね、素晴らしいの一言。私に財力があれば、四十二年のロマネ・コンティでも飲みながら鑑賞したかった(実際はジンのロックです)。ま、そういう作品です。優雅で、上品で、ビターで、慚愧にたえない。1940年前後が舞台ですから。ナチスドイツを遠景に、イギリスとフランスが北アフリカで派遣を争っている。そんな政治的情勢などうっちゃって、性愛におぼれていく。やがて……。
ダニエル・シュミットは、この作品に限っていうなら、ヴィスコンティやベルトルッチやデヴィッド・リーン側の人。天才じゃないです。偉大、です。
さまで第二次大戦期のヨーロッパのデカダンを表現した作品って、ほかにあるのかしら。煙草の紫煙のたゆたいさえ、永遠に感じられるような。白のスーツに身を包んだブルジョワ階級の白人が、植民地で堕落していく映画で外れってあります?
こうなると俄然ファスビンダーも観たくなります。
大人の映画です。
「言葉は遅すぎる。……早すぎることも」
《The words always come too late. …Or too soon.》
誠に。