KnightsofOdessa

Something Useful(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Something Useful(英題)(2017年製作の映画)
3.0
[たゆたう世界の観察者] 60点

友人に絶対観ろと言われたトルコの怪作。MUBIのTOP1000に突然現れたことで界隈でも話題となった(しかも現状23位)。25年ぶりに同窓会に出席しようと列車に乗り込んだ詩人で弁護士のレイラは、若い看護学生カナンに出会う。田舎の個人医院に就職面接を受けに行くという彼女は、徐々にその本当の目的を明らかにしていく。それは、知り合いの医師から頼まれたという仕事で、彼の全身麻痺の友人ヤブズを安楽死させるというもの。年長者として、弁護士として、同じ女性として、人間としてカナンを心配するレイラは、彼女の旅に同行を申し出る。レイラが詩人ということもあって、夜行列車→通り→部屋と場所を移動しながら、彼女が語り部となって世界を捉えた滑らかな詩文によって世界を綴っていく。特に列車における窓の外の世界と窓に映り込む自分の顔というショットの連続には驚かされる。厭世的だが妙に前向きな作品の中核をなす、世界との距離感を的確に描き出している。

ヤブズの家の描写も興味深い。階上の女性がチェロを弾いていて、その音色に併せて反射された光が天井をゆらゆらと揺れる。引用されているフリオ・コルタサル『黄色い花』の"Mortality"と呼応した刹那的な魅力がそこにあった。小難しい会話は途中からほぼ聴いていなかったが、多分"逆・千夜一夜物語"的な感じだったと思う。
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa