ゲゲゲの鬼太郎と市川崑の金田一耕助シリーズファンなので、楽しみにしていた作品。市川崑作品のショットを構図まで真似してくるとは驚いた。
冒頭の鬼太郎登場シーンではそれぞれローアングルで鬼太郎と猫娘が映し出される。これにより、水平に立っているはずの両者とジャーナリストに高低差が生まれている。これは違和感を露呈するための異化だ。
また、全体的に前景まで障壁が何もないロングショットが多い。これを言語化することは難しいのだが、前景が空っぽなロングショットの一部では見えない境界を作り出している。特に水木がトンネルをくぐるショットでは前景に垂れる水滴と水木との距離の遠さがそれを醸し出している。このお化け屋敷的な映像演出は宮崎駿の千と千尋の神隠しでもあった。特にロングショットではそれが顕著だ。
また余談ながら、ここは水木しげる作品へのオマージュもあるのだろうが、基本的に背景美術が動かない。風や影の動きは顕著に示されているのに、雲の動きや湖の動きは抑えられているし、木々の揺れは全くない。