元空手部

夜明けのすべての元空手部のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.2
当たり前といえば当たり前だが、本作ではPMSやパニック障害、自死遺族の苦しみは内面に位置する。あくまでその痕跡を追い続けるのみである。それは捉え所によってはユーモアにすらなる。兆候や時間的経過のような描写もないため、当事者として共感に誘う要素は排除されている。それに、痛みをともに分かち合えるとすればワーグナーのパルジファルのような非現実的な英雄に委ねるしかあるまい。しかし、外在化したものを丹念に追うとなれば本作は徹底している。
ハウスダストが舞い散る様もフィルムに克明に残し、ガラスやパソコンの画面だけでなく、プラネタリウムのチラシにまで人物や事物が映り込む。このきめ細やかさに三宅唱が映画へ求めたものがあるのであろう。
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