JunichiOoya

Firebird ファイアバードのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

Firebird ファイアバード(2021年製作の映画)
2.0
エストニアを併合していた時期のソ連兵たちの三角関係譚。
エストニアの地で同性婚が認められる契機にもなったとして注目を促すプロモーションもあるけれど、私は単純に娯楽ロマンスとして見物。

主人公は地方農村でうだつの上がらない暮らしを続けていた空軍二等兵。三角関係のあとの2人は、芸術家肌のシュッとした将校と華やかさ溢れる長身痩躯の女性兵士。

階級差、性差、組織内立ち位置、そして各人のエゴ。それらを組み合わせたメロドラマはそれとして十分に楽しめる。

一方で残念な点がいくつか。

①木製ミグ模型 全編を通して半ば狂言回し的に挿入されるこのおもちゃは形から言って多分ミグ17かしら。意味ありげに繰り返し登場するのでラストに大きな伏線回収を期待したけれど…
②ミグ実機描写 70年代後半の時代設定なのでミグ21あるいは23辺りだと思うのだけど、予算の関係なのだろうな、脚部など一部描写に終始していてかえって安っぽさを印象付ける。合成シーンもいかにも安直で、逆にチープさを極めたセット撮影とかに振り切った方が良かったかも。
③主役二等兵の肉体 トム・フライヤーは脚本にも参加したこの映画のメインメンバーだと思うけど、あの隆々とした筋肉から田舎農村育ちの青年をイメージするのは無理。日頃の生活が強いる力仕事が作った身体ではなく、明らかに人工的にビルドされた胸板に大いに鼻白んだ。海の岩陰での抱擁シーンに彼の胸板が欠かせないと思ったとしたら、それはあまりに考えが浅いんじゃないかしら。彼の小柄さとも相まって、私は日本の俳優(兼レスラー)チョコボール向井さんを思い出しながら見た。
④KGBのおっさん そしてこれが何より情けなくて結局喜劇を見た心持ちで映画館を出ることになってしまったんだけど…。
ラストのあのおっさんの「ニヤリ」はあかんでしょう。一気に作品の品を落としてしまう。撮り手は明らかに客への媚び方を勘違いしている。
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