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真夜中乙女戦争の8637のレビュー・感想・評価

真夜中乙女戦争(2021年製作の映画)
3.7
この映画の113分にかけた1000円は、Netflixベーシック1ヶ月分に値するだろうか。

この世で最も劣悪な承認欲求がこの爆破なのだとしたら...自分が幼心に感じていたサークルという存在への疑問点が、悪い意味で解消されてしまった気がする。様々なカルチャーに浸ることから始めて、気付けば許されない企みに付き合うことになる。

人は単純からの脱却を願い、行動する側としない側に分かれる。まあただこの映画の場合、行動しない側が東京にいるだけで雑魚認定されるのもどうかと思う。
あと単純に、彼らがサングラスを着けたりしてわざと格好つけている様があまり完成していない気がして少しダサかった。そして、東京爆破の映画なのに主題歌がビリー・アイリッシュなのも少し違和感。
そもそもこれが現実であるという確証もない。わざと惑わせているショットまである。
だからこそ表現できたコロナ禍との対比は、現状の否定にも擁護にも見えて面白かった。

ただ、映像美的に相当面白いことはしていたと思う。ファーストカットはとても好き。360°回転という新しい表現方法は観客の視覚を混乱させることもあって楽しい。登場人物の行動の意味が分からなくても、映し方が面白いからそれで良い。
惜しかったのは、終盤のCGが少しチープだったのと、それもあって盛り上がりに欠けた事。


最後に、この映画を好きになれなかったのは多分自分のせいでもあると思う。
その劇場の最終上映だった事もあり、何故だか分からないが「途中でリアルに爆破が起こるんじゃないか」とありもしない想像に辿り着いてしまい、そこからあまり集中できなかった。勿論そんな事起こるはずもないので、本当に無駄な想像だったと後悔している。
ただ、だからこそこの映画から感じ取れたことがある。それは、些細な出来事で怯えてしまうほどに私達の生命には保障がない事。そして、映画には悪意という面でも大きな社会的影響力がある事だ。映画に触れる箇所もあって、「アイダよ、何処へ?」のラストシーンをふと思い出した。
それこそが、この映画に感じた、ある意味の価値だ、とでもまとめておこう。
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