次郎

ARIA The BENEDIZIONEの次郎のレビュー・感想・評価

ARIA The BENEDIZIONE(2021年製作の映画)
4.6
なんとか上映終了前に滑り込めた《蒼のカーテンコール》最終章。映画館による極上の音響で聴けたChoro Clubの楽曲はやはり最高で、深く包み込むようなコントラバスの響きだけでうっとりしてしまう。
真打ちは最後に現れるということで、姫屋のプリマ昇格エピソードはARIA史上最高のエモーション。元々アニメ本編でもを晃さんと藍華ちゃんの絆の深さを示すエピソードはどれもエモエモでなな感じで大好きだったけど、本作でそれが極まった感じ。圧倒的絆の深さよ…。
実際のところ、ARIAという物語を通じて最も成長を描かれたのが藍華というキャラクターなのだと思う。最初から完成されていた灯里やアリスと違い、彼女だけがシーズンを重ねる度に印象が変わり続けた。劣等感や弱さと向き合う等身大の姿は、理想郷であるアクアと現実との架け橋だった。
そして覚悟完了が最高に決まっている晃さんの圧倒的カッコ良さ。冒頭のプリマ昇格シーンからして最高じゃないですか?その髪の長さからはアリシアさん昇格後に相当の期間が経っていたことを予想させ、その間も努力を積み重ねてきたことを想像できる演出だけで感涙もの。私服姿も良過ぎる…。
そう、本作で描かれたのは、これまでのARIAで描かれてきた平凡な日常の中にある幸せとは異なる、「平凡な努力」を積み重ねることで見えてくる景色。アニメから劇場版まで、積み重ねた語りによってでしか描けない景色もまた存在する。決して大きな何かを成し遂げる必要はない、ただ後ろめたくない日々を淡々と積み重ねていくこと、平凡な努力というのはきっとそういうことなんだと思う。
実のところ2人の絆が深すぎるあまり、姫屋+後輩3人組以外の登場人物がほぼほぼ印象に残らないという劇場版としては微妙な問題も抱えているのだけど、それでも蒼のカーテンコールの締めくくりとして姫屋のエピソードはふさわしい。だってこれは、ひとつの物語の終わりと、新しい始まりについての物語なのだから。そしてエンディングで流れるはじまりのうた、『ウンディーネ』の2021年ver.で、円環はもう一度結ばれる。
そして自分にとっても、本作の上映こそがARIAを知るはじまりの機会だったし、ブラジル音楽好きな自分の耳を捉えたChoro Clubの音楽がなければ触れることもなかっただろう。それでも、ARIAは自分にとってオールタイムベストなアニメ作品と言える喜びを与えてくれたし、そんな作品にBENEDIZIONE(祝福)という言葉は相応しい。本作に込められた思いに対して、万感の祝福と「ありがとう」を。
次郎

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