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先生、私の隣に座っていただけませんか?の8637のレビュー・感想・評価

3.8
それは愛の言葉。どう考えても可笑しい構図に苦笑して画面すらまともに観られない恥ずかしさ。気付いた時、妄想で既に括られていたのは"現実"。映像・照明・音楽・漫画・演出全てが一級品だからこその心理戦に、結局は一時も目を離せない自分がいた。直感に過ぎないが、この監督、好きかも。

浮気性の情報を聞いただけで薄っぺらい人間に見えてくる柄本佑と、ただただずる賢いのを期待してしまう黒木華。イメージは二人そのものだし、みんな目が繊細。それに加え、過度に格好良い男に見せないのが逆に美男な金子大地、これから愛人役が定着してしまいそうな程にはまったテンションの奈緒、安定としか言いようがない風吹ジュン。登場人物はこの5人だけ。それを忘れる位に物語が濃密。

日本でここまで映像が"地味に"好きな映画はないと思う。純粋無垢なコメディ的ラブストーリーが、ライティング・手持ちカメラで陰湿な田舎泥沼不倫サスペンスに転換。あり得ない側面が、映画の導き方を分かっていた気がした。音楽は、エンドロールを見ていたら気鋭の渡辺琢磨氏の名前があって本当に納得。

自分を描いた物語は、時に都合良く誇張する。物語に溺れた読者は、バックボーンなしに、これをどう考察するのかも気になる。そしていつか真意を知って「うそぉん...」と言うのだろう。

最後に、今回はFan's voiceさんのご厚意で「シークレット試写会」としてこの映画を観させてもらった訳で。応募した時点では時期と上映時間的に「1秒先の彼女」辺りが観られるのでは...と思っていたのですが、まずファントム・フィルムのロゴが流れて驚きました。この観方かなり良いですね。。
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