ベルギーのアントワープで、ユダヤ聖教の商人からでっかいダイヤモンドを強盗したフランキー（ベニチオ・デル・トロ）は、ニューヨークの宝石商・アヴィにこれを売るために、ロンドンに住むアヴィの右腕・ダグに持っていく。
フランキーはロンドンで銃を調達するために元KGBのボリスに会いに行くが、ボリスはフランキーと強盗をした1人と繋がっていて、フランキーからダイヤを奪うために、違法のボクシングに賭けをすることを提案する。
やたら登場人物が多い上に、訛りの強いイギリス英語で、なにが起こっているのかあんまり良くわからなくて、途中気を失った（笑）
イギリス英語でも、多少発音が硬いくらいで分かるのもあるんだけど、いわゆる「コックニー訛り」ってやつが全然わからないので、ちょっとググってみたら、ロンドンの英語教師が説明しているユーチューブ・チャンネルを見つけた。
この人によると、わかりやすいイギリス英語はスタンダード・ブリティッシュ・イングリッシュで、RP（Received Pronounciation：「受け止めてもらえてる発音」の意？)と呼ばれている。対してコックニー訛りっていうのは、ロンドンの労働者階級の訛り。発音がアルファベット通りでないくらいならわかりやすい方で、上級編になると電話 (phone) が犬 (dog) になったり、時間 (time) がレモン (lemon) になったり、スラングが多くて意味不明になるらしい。
他のユーチューバーは、RPはいわゆるクィーンズ・イングリッシュってやつで、ウエスト・エンドの人が使っているスタンダード・イングリッシュって言ってた。昔ペット・ショップ・ボーイズってバンドの『ウエスト・エンド・ガールズ』って曲があったけど、イースト・エンドの労働者階級は、コックニー訛りがあると社会的に差別されるので、昔は隠す傾向があったらしい。
都会の労働者階級の訛りって考えると、東京の江戸弁（べらんめえ）みたいなノリなのかな？と思うけど、出がバレると恥ずかしいから隠す、っていうのは、茨木とか栃木から上京してきた人の訛り、みたいな感覚なのかもしれない。
という雑学を学んだ上でまた映画に戻ると、オープニング、フランキーが強盗したダイヤモンドを、ニューヨークの宝石商・アヴィ、元KGBのボリス、ボリスに雇われた黒人の3人組が取り合うっていうプロットがまずある。
で、ボリスがフランキーにボクシング賭博をやらないかと持ちかけたことで、ロンドンで闇賭博にボクサーを調達しているゲームセンター経営者・ターキッシュ（ジェイソン・ステイサム）と、ギャングの元締めブリック・トップが絡んでくる。
ターキッシュが新しいキャンピングカーを買おうと、弟のトミーとボクサーの1人をパーキィ（pikey）と呼ばれるアイリッシュ・トラベラー（＝ジプシー）のところに送ると、ミッキー（プラッド・ピット）という違法ボクシングのすごい強い奴が出てきて、こいつがまた話に絡んでくる。
ブラピのパーキィ訛りは「映画の中のアイリッシュ訛りの黒歴史」に数えられているらしいので、正確なのかどうかは定かではないが、この役はロンドンの人でさえ「なにを言っているのかわからない」役なので、その目的はしっかり果たしていると思う（笑）
中盤ウトウトしていたんだけど、ミッキーのお母さんのキャンピングカーが放火されたあたりからちょっとハードボイルドっぽくなってきて「お、なんだなんだ、なんか起こっているぞ」と、寝ていたところを巻き戻してみたら、この辺が一番おもしろかった。ブラピのモッコリも見られたし（笑）
で、結局はブラピの一人勝ちだなあって思った。この頃のブラピ、何やらしてもカッコいいよな〜。ブラピは『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』の大ファンで、ガイ・リッチーと仕事がしたくて、「新作に出させて」って言って、このミッキーの役はあとから作ったらしいんだけど、それで見せ場を全てかっさらっていくという、イケイケだったんだな、ブラピって。
映画評論家はガイ・リッチーの長編処女作の前作『ロック、ストック・・・』はすっごい評価しているけど、『スナッチ』はそこから全く成長していない、とネガティブな評価の人も多いらしい。
私は『ロック、ストック』観てないので、スタイライズされた撮影方法が新しいし、いままで「恥ずかしい」とされていたコックニー訛り全開の「ロンドンの闇社会」をコミカルに紹介しているところがアメリカでウケたんだろうなあ〜、この頃からロンドンかっけー！とセレブが続々イギリスに移住し始めたんじゃ？サッチャー時代は税金高くてみんなアメリカに行きたがっていたのに・・・・とか思いながら観ていた。しかしこういう極端にスタイライズされた、お話よりスタイルの方が大事な映画ってあまり好みではない。ハッキリ言ってブラピが出てなかったらどーでも良い映画だったと思う。
