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コーダ あいのうたのsacoのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0
期待以上に良かったです。

愛する家族の絆と、自分の夢との狭間で葛藤するルビー(エミリア・ジョーンズ)の姿に感情を持っていかれました。

観始めてしばらくしたところで、過去に観た2作品の記憶が浮かびました。

『旅立ちの時』革命家で指名手配中の家族とピアニストになる夢との間で苦悩するダニー(リバー・フェニックス)と、『ギルバート・グレープ』家族の中で知的障がい者の弟や身体的に動けない母親の面倒を全て担っている自分の立場とそこを飛び出したいと思うジレンマに苦しむギルバート(ジョニー・デップ)。

“要”となる自分が居なければ家族が崩壊してしまう....。
そういう立場で、子供の頃から当たり前にやってきた事に自分の人生と愛する人たちの事を思う時、出口の見えない絶望と焦燥感に襲われる。
秀でた才能を持ち合わせていれば、尚のことだと思います。
聾者の家族の中、ただ1人の健聴者ルビー役のエミリア・ジョーンズは撮影にあたって手話や歌唱の訓練をしたとのこと。ながらの演技は難しいと思うけど、とてもナチュラルに感情の起伏を表現して素晴らしいと思いました。

意地悪な人も出てこず大きなアクシデントも起こらずシンプルなストーリーではあるけれど、胸に響くのはきっと誰もが共感できる物語だからでしょう。
そして、楽曲の力も大きい。
父親に歌うシーンやオーディションの場面では感極まりました。

家族と別れて、自分の人生へと旅立つ。
燃え盛る小さな家を見つめるギルバートも、独り自転車で家族が乗る車を見送るダニーも、そして抱きしめ合った家族に別れを告げるルビーにも、新たな人生が奏でられる予感がしました。
とても素敵な作品でした。
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