回想シーンでご飯3杯いける

コーダ あいのうたの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0
基礎疾患がある身体なので、コロナ感染拡大が続く2022年はずっと劇場鑑賞を我慢していた。そして、以前から観たかった本作をまだ上映している劇場を発見! オリジナルのフランス版は公開当初に観たきりで、ほぼ内容を覚えていない状態。完全な新作を観るような感覚で楽しんだ。

主人公の少女以外、家族がみな聾者という設定ながら、難病物を見ている感覚がしないのが特徴。その状況から生まれる、家族間のコミュニケーションと、唯一の健常者である主人公の進路を軸にしたコメディ・テイストの作品である。

歌う事が好きで、大学受験を迎える年齢でありながら「人前で歌った事がない」という意外な境遇。そう、彼女の生活の中には、歌声を聞くことが出来る人間がいないのだ。この辺の脚本が秀逸で、作品のユニークな世界観に引き込まれる。

そして、同じ聾者であっても、家族の気持ちは三者三様である事を描いているのも良い。家族が聾者なので、言葉による意思疎通よりも行動や表情による演技が自然と多くなる。この辺りに、本作の魅力の秘密が隠されているように思う。

アメリカ製作という事で、マーヴィン・ゲイやジョニ・ミッチェルによる、世代を超えた名曲が使用されているのもポイントだ。主人公世代も、親世代も楽しめる作品だと思う。