アカデミー賞最優秀短編実写映画賞受賞の話題作。
「タイムループ」という非現実な設定を借りて今ある「現実」を描いた、メッセージ性の強い社会派映画。
まずそこがすごいと思った。
「タイムループ」というエンタメ性とファンタジーを期待して観ていると、じわじわと現実を突きつけられる。
なんという苦しい、悲しいループ。
これはファンタジーじゃない。
このループは今も現実に起こっている。
何世代にもわたって、同じ歴史が繰り返されている。
この光景は、見たことがある。
あの事件も、あの事件も、「I can't 〜」という(劇中と同じ)あの人の最後の言葉も、その最後の言葉を掲げて抗議デモをする人たちの姿も、記憶に新しい。
デモに続いて起こった暴動に対して遺族の方が言ったことが、この映画のあるシーンで主人公がとった言動に反映されていたように思う。
差別について描くとき、このスタンスは不可欠だと思う。
でなければ、正義は悪に反転し、またしても暴力と憎しみのループが生まれ、際限なく繰り返される。
途中で流れる曲は、Bruce Hornsby & The Rangeの「The Way It Is」。
昔から知っていた曲なのに、何について歌った歌なのか、今日まで知らなかった。
時代は違えど、人種差別や格差社会について歌った歌だという。
80年代のヒット曲。
「法律が変わっても、人の心は変わらない。」
「世の中そんなもの。
変わらないものだってある。」
と絶望感に満ちたコーラスの最後には、
「でも、きみはそんなこと(世の中を変えられない、なんてこと)信じるな。」
というメッセージがあった。