真田ピロシキ

ひまわりの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
3.3
ロシアのウクライナ侵攻で注目を浴びて上映されている1970年のイタリア映画。当時の日本でも大ヒットしたそうだが全然知らなかった。メインテーマはどことなく聞き覚えがある。それでろくに映画の内容も知らずに見たのだけれど、積極的には見ない恋愛映画の色合いが濃厚で結構困った。前半は入隊間近なイタリア人のアントニオとジョヴァンナが結婚すれば12日間の入隊免除を受けられるという理由で式を挙げての新婚生活が描写される。ジョヴァンナが「別に私でなくてもいいから結婚なさい。その間に戦争は終わるから。」と言っていたくらいなので冗談のような結婚にも思われるが、数日間で想いは本気になったのか期日が近付くとアントニオに狂言暴行をさせ入隊を免れようと試みるが、入院した病院で面会中に事に及ぼうとしてたのをしっかり見られていて目論見は敢え無く潰え、過酷なロシア戦線に送られる。嘘のような関係から始まり嘘にかけた行動の失敗。

後半は前半の穏やかさとはうって変わり、地獄の極寒ロシア戦線が映され今後のハードな展開を予期させられる。終戦後アントニオの消息が途絶えるも、生存を諦めていないジョヴァンナは問い詰めソ連まで出向く。その最中で印象的なひまわり畑にある共同墓地が映し出され、ここが今のウクライナでの撮影でイタリア兵のみならずロシア人もここで息絶えたという言葉に現在のウクライナを重ね合わせる事ができる。

必死の思いで捜索するジョヴァンナが辿り着いた事実は、死んだと思われていたアントニオは現地の女性に救出されて娘まで設けていたこと。衝撃の展開だが『はいからさんが通る』に似たようなのがあって、こっちのほうが先だから影響されたのだろうが、序盤からメロドラマ的な匂いを感じていたのがさらに強くなりやはり苦手かもと。アントニオが映画を通してやたらとモテ野郎なのもどこか軽薄な印象を受ける。しかしここでもジョヴァンナに偶然会った当初に素性を偽っていたアントニオの嘘は保てずに哀しい展開を迎えるのが意味深くて、嘘がテーマになっているように感じられる。その後、アントニオが「戦争でそれまでとは違う人間に変わってしまった」みたいに言う台詞があって、また想いを断ち切れずミラノに戻ったアントニオが見たのは自分だけではなく決定的に変わってしまったジョヴァンナの現在。ここには今まで物語に絡んできた嘘はなく真実はとても残酷。このやるせなさはメロドラマではなくて、戦争が人々の運命を歪めてしまうことを如実に物語っていたと思う。

見てる間は「あまり趣味じゃないけど映画料金がウクライナに行くから良いか」くらいの思いだったが、思い返してみるとなかなか悪くはなかったかな。