ShinMakita

野良人間 獣に育てられた子どもたちのShinMakitaのレビュー・感想・評価

1.4
1987年、メキシコ。町から離れた山岳部の民家が火事で燃え、1人の男と3人の子供が焼死体で発見された。30年後、本作の取材クルーは火事の一報を流したTV局を訪れ、当時の映像と取材記録を借り受ける。それによると、死んだ男の名はファン・フェリペ。隠遁していた元修道士だった。
厳格なクリスチャンの母に育てられ、決まったように神学校に進んだファン・フェリペは、やがて教会で無神論者の精神分析を受け、己の信心に疑問を持つようになる。そして聖職につく夢を捨て、隠遁者となった。しかしあることを機に、彼は再び信仰に目覚めることになる。それは、森の中で3人の野生児を発見したことだった。ファン・フェリペは、その3人に洗礼を施しクリストバル・アントニア・ファンと名付け、人間らしく育てることに喜びを見い出していく。そしてその生活をビデオカメラに収めてテープを修道士時代の友人に送っていたのだった。取材クルーがそのテープをあらためている限り、ファン・フェリペの「教育」は善行のように見える。が、それも町の人々が彼ら4人の奇妙な生活に気づくまでだった。謂れなき中傷にさらされたファン・フェリペは、日に日に狂信的となり、やがて追い詰められていく…


「野良人間」


以下、彼の目には確かにネタバレが宿っている。


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ホラーやモンド系、フリークス系の話をフェイクドキュメンタリーで撮ったジャンル映画は多数ありますが、普通のドキュメンタリーをフェイクドキュメンタリーとして描く作品には初めてお目にかかりました。怖いもの見たさで本作に臨んだ観客は、ただ困惑しかないでしょう。野生児が何かやらかすわけじゃないし。淡々と、ファン・フェリペ一家の生活を見せていくだけですから。ただし、信仰の名の下に発狂してしまった男のエゴや悲劇、そして児童虐待の連鎖を描いたドラマとしては見応えがあると思います。といってもドキュメンタリー手法で撮った意味がイマイチわかりませんけどね。エンドクレジット直前の、「兄の存在」のネタバラシは、確かにドキュメンタリーにしか出せない効果ですけどね。

見なくても全く損はない一本だし、明らかに宣伝惹句も大間違いで騙された感も強いけど、事前に情報を入れないフラットな気持ちで観たら、退屈はしない出来。子供たちの野生化の原因も、彼らを攻撃し排除するのも、全て人間であることに戦慄。…人間って、業深いよなぁ。そして勝手だよね。
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