Ricola

ベネデッタのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

信じることがどれほど難しいことか。それは特に、対象が人の場合さらに難しいのではないか。
中世の時代と比べて様々な事象の原因が解明された現代においても、そのことは変わらない。

奇跡を起こし、街を伝染病から救ったというベネデッタ。
彼女は神の使いだと言われたが、そうである前にひとりの人間、女性であることがこの作品において強調される。


「自分の最大の敵は自分の体よ」
「愛とは孤独を感じないことです」
セリフの節々から、ベネデッタの本音を暗示したり本質をつくものを感じる。
性に目覚めた彼女は、自分の使命を果たすことに情熱を注ぎながらも、自分自身を止められない。
ベネデッタは聖人としての顔とひとりの女性に夢中という人間らしい顔の、2つの顔を持っているのだ。

エロティックな描写が多く、そこに狂気じみたものを感じる。
限度を知らないベネデッタと、そそのかすかのように彼女を快楽へと誘い続けるバルトロメア。
さすがにベネデッタが母親からもらった木製の聖母像を、バルトロメアが削ってで道具にしてしまうのはびっくり…。マリア様を、神様を侮辱していると捉えられても仕方ないそんな行為を全く咎めないベネデッタは、それほどバルトロメアを愛していたのか。それともただ性欲に溺れていただけなのか。わたしは後者なのではないかと思ってしまう。
他のシーンにおいても寝室の仕切りとして機能している薄い布越しに胸を愛撫したり、彼女たちがお互いに求めているのは心ではなく体なような気がしてならないのだ。

バルトロメアも心からベネデッタを愛していたとは信じがたい。
彼女はベネデッタを信じ切ることができずに、ベネデッタを処刑台に送ることになったのだから。ベネデッタは、キリストのように民衆からは支持を得る一方で、教皇などの権力者から疎まれ利用される。そして味方だと思っていた者から裏切られる。
あまりに安直だが、キリストと弟子のユダの関係性に近い点ではある。

ベネデッタの孤独は決して埋まることはなかった。ひとりの人間として受け入れられることが叶わなかったのだから。
ベネデッタの起こした奇跡は果たして真実なのか。それは神のみぞ知る…のかもしれない。
Ricola

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