とり

ブラック・ジャック ふたりの黒い医者のとりのレビュー・感想・評価

2.8
ブラック・ジャックのアニメは劇場・ビデオ・テレビと何作か作られてきましたが、これらと比べるとなにげに今回の作品の出来具合はビミョーでした。
絵柄は好みだったんですが、肝心のストーリーにちょっと深みがなかった。原作は全部熟読してて昔から大好きなので、劇場で観ることができただけでも満足でしたけど。

お客さんの入りは予想に反してガラガラ(笑)ロビーにはお子様がイヤというほどあふれかえってたけど、みんなどこに行ったんでしょうか。チキンリトル?ムシキング?プリキュア?あらしのよるに?このメンツじゃB・J負けるわなーそりゃって感じ。
内容はお子様向けだったけどテーマはちょっと難しいし、普通の大人が見るにはかなり物足りない⋯なんとも中途半端だ。ではターゲットはというと、やっぱりほぼB・Jファンのみということになるんでしょう。完成具合から見ても内容を楽しむレベルにはちょっとアレでして、うじゃうじゃ出てくる手塚キャラや小ネタでニヤリとしたりして過ごすのがこの映画の楽しみ方ってところでしょう。

お子様にはこのアニメのテーマは難しすぎると書いたけど、上手く描ければけっこう子供相手でも考えさせることはできると思う。実際原作マンガではその辺が神レベルで描かれてました。
原作を知ってる私としてはアニメで描かれていない部分を脳内で補完しながら見ることはできたけど、そうじゃない人にとってはおそらく物凄く説明が足りなかったのではないかと思う。
特にドクターキリコのキャラクター描写が足りない感じがした。軍医であったという言葉だけでは彼がなぜあそこまで安楽死を続けているのかに重みがなさすぎる。結果キリコと相反するB・Jの苦悩が薄っぺらくなってしまう。そもそもB・Jのキャラについては序盤、刑事さんの超説明口調のまくしたてるセリフによって概略が解説されてる点でちょっと引いてしまいました。
そんなこんなで描こうとしてるメッセージを感じ取ることはできるけど、やや説得力に欠けていたんじゃないかな。メイン料理のないフルコースみたいなもの。もったいないことです。

声優もひどかった。B・J&ピノコのコンビは昔から同じしっかりしたプロの声優さんなので、文句なく素晴らしかったです。
が、サブキャラとして登場した若い2人、ロックとみどりの声優がどうしようもなかった。おそらく若手俳優なんでしょうな。話題作りで素人を起用するなとは言わないけど、もうちょっと選ばないとー。
キリコの声優が物凄くカッコ良くて雰囲気があったのが大きな救いでした。加賀丈史だったんですね、さーすがー!あと琵琶丸も凄く自然で上手いなぁと思って後で見たら野沢那智。やっぱりプロと素人の差は天と地ほど開きがあります。アニメだと尚更これが顕著です。

エンドロール後にさらにワンシーンあるんですが、これはハッキリ言っていらない、私は。なんでもかんでも白黒つけたらいいってもんじゃない。もともとわかりきった筋書きだし、エンドロール中流れるスケッチ風イラストだけでじゅうぶんでした。あれじゃ余韻も何もあったもんじゃないよ~。あとエンディングテーマの歌がキモすぎました。

なんだかんだ書きましたがそれなりに楽しみました。同時上映の「Dr.ピノコの森の冒険」もなんか良かったし。
でもこれだけは言わせて。
ブラック・ジャックはサスペンダーなんかしませんからー!

MOVIX三郷
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