ハレルヤ

OSLO / オスロのハレルヤのレビュー・感想・評価

OSLO / オスロ(2021年製作の映画)
3.8
1993年にノルウェーのオスロで、イスラエルとパレスチナの紛争を終わらせるための会合「オスロ合意」が行われた。その両国の関係を裏で取り持ったノルウェー人夫婦の姿を追った社会派ドラマ。

製作総指揮はスピルバーグという事でも話題になった本作。監督は彼ではありませんが、何となく彼のドラマ映画っぽい雰囲気があります。本作の撮影を担当したのはスピルバーグ映画の常連のヤヌス・カミンスキー。場面ごとのカラーを重視した配色や、白熱する舌戦でのカメラワークにはスピルバーグ作品らしさが見えました。

妻である外交官のモナと、社会学者の夫テリエ。この2人が互いの人脈を駆使してイスラエルとパレスチナにアプローチ。歴史的な合意への歩を着実に進めていきます。

もちろん簡単にはいかない事だらけ。長年敵対関係である両国で、互いに直接顔を合わせる事も本来は法律で禁じられている為、非公式でのやり取り。会えば当然罵り合い。胃に穴が空きそうなほど山積みの問題。

失敗すれば更なる紛争拡大に繋がり、多くの命が失われる事態になりかねない出来事。中立の立場を上手く保ちながら両国を引き合わせた2人の姿には壮絶な心労があっただろうと感じます。

この歴史的な合意を抑制されたタッチで描き、目を引くような場面は無くとも、全編で繰り広げられる会話劇にはずっと引き込まれていました。

イスラエルもパレスチナも互いに譲らない姿勢を見せながらも、徐々に負の連鎖を止めようとそれぞれ譲歩していく。それでも最後まで気が抜けない状況は続いて、最終的には無事合意に達した時は見ている側も安堵感がありましたね。

これで希望が見えたはずですが、エンドクレジットで突き付けられるのは非情な現実。結局今も紛争の火は消えておらず、この合意も意味を成さないものに。この厳しい実情を深く思い知らされました。現在U-NEXTでしか見れない作品ですが、もし見れるならば是非一度鑑賞してほしい作品です。
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