マヒロ

007/美しき獲物たちのマヒロのレビュー・感想・評価

007/美しき獲物たち(1985年製作の映画)
2.5
さらば、ロジャームーアボンド!な007シリーズ14作目。

7作品にわたってジェームズ・ボンドを演じてきたロジャームーアの引退作なんだけど、正直なところ華々しいフィナーレとはならなかったかな…。

良かった点を先にあげると、敵のインパクトの強さ。今回は実業家ゾリンとその用心棒メイデイがボンドの前に立ちはだかるんだけど、ゾリンを演じるのが若き日のクリストファー・ウォーケン!今までの007シリーズの敵はどうもふてぶてしいオッサンばかりだったので、男前の若者というのはなかなか新鮮だった。メイデイの方も黒人角刈り怪力女というキャラの濃さで、やたらとインパクトはあった。

ただ、それ以外の部分がぼんやりした印象。
まず、ボンドガールがなかなか出てこない!一時間くらいたってようやく現れたと思ったら、今度はなにやら脇の方できゃーきゃー言ってるだけでちっとも印象に残らない。『ドクターノオ』のボンドガールもやたらと出てくるのが遅かったけど、あちらはあまりにも意味不明過ぎて逆に印象に残ったのに対してこっちはビックリするくらい影が薄い。
そもそも敵のたくらみも、形こそ違えど『ゴールドフィンガー』とほとんど同じなので新鮮味がない。
ジョン・グレンだし、と期待したアクションもどうにもパッとせず、最後にしてはあまりにも微妙な作品になってしまっていた。

しかし、途中燃え盛るビルの中からボンドガールを助け出し、躓きながらも懸命に担いで脱出するボンドの姿には、常にのらりくらりとしていたムーア・ボンドの知られざる人間味みたいなものが感じられて、なんかこみあげてくるものがあったな。
思えばもう還暦近く、最初はベイビーフェイスだなぁなんて思っていた顔にもシワが刻まれて、女好きの諜報員という役をやり続けるにはもう限界だろうし引退はしょうがないことなんだろうけど、やはり寂しい。コネリー→レーゼンビーと続いてきたボンド像みたいなものをぶち壊すコミカルで親しみやすいキャラクターを作り上げ、シリーズ黄金期を支えた功績は大きいよなぁ。映画としてはどうなんだ、と思う作品の方が多かったけど、今思い返すとそれもロジャームーアの味なのかな、と思えてきた。なにはともあれお疲れ様でした!

(2015.120)
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