アネモネ

渇きと偽りのアネモネのレビュー・感想・評価

渇きと偽り(2020年製作の映画)
4.0
全くチェックしてなかった作品でしたが、近くのシネコンでやっていたので観に行ってみました。
地元ではだいたいこのような映画は小さな所でしか観れないんですが、大画面で観れてラッキー!
久しぶりに本格的なクライムサスペンス映画が観れて大満足でした。


干上がった大地がカサカサしていて妙に画面が明るく見える感じが逆に街の冷たさを引き立たせます。
田舎の閉鎖された街、干ばつにより余計に荒れた人々の心。
まず感じるのは都会から戻った洗練された主人公と街の人々の違いです。
外部を受け付けずその街のルールが曲がり通っているから尚更、殺人事件まで街の雰囲気・噂に湾曲されてしまう怖さがありました。
その街の中だけでいきがってる奴、いるよねー。
田舎っぺ丸出しなのに、イケてると思っているっていう。
田舎独特の仲間意識も偏見も知っているフォークが主人公というのがこの映画の基本だと思いました。

閉ざされた街だからこそ誤った思い込みで解釈がされた2つの事件。
全員の顔がわかる小さな街。
閉ざされた田舎だから来た人。
閉ざされた街だから出ていった人。
気候変動による貧困。
そして過去の辛い出来事と向き合う必然性。
きっとこのような閉鎖れた街は、お互いを見ているようでみんな自分が生きるのが精一杯なんだと思いました。
それに加えて思春期も相まって、ちゃんと他者と向き合っていなかったという、誰にでもある後悔。
観客も主人公の目を通して様々な要因と向き合い、一つずつページをめくっていった時、そこにやっと真実が見えてくる。
まさに小説を読んでいるような映画でした。

みんなが犯人に見えるし、主人公でさえ真実を見失いそうになる展開からの伏線回収は見事。
あ!ってなる事がいっぱい。
過去も現在も、狭い範囲で判断しがちな出来事も
少し目線を変えるだけで変わるはずなのに、なかなか出来ないのが私達。

街唯一の保安官の彼がちょうど中間の役割を果たしていて演技含めとても良かったです。

思い出の中とは違って当然とはいえ、回想シーンと現在のパートでの景色の違いに悲しくも愕然としつつ、
今の経済だけじゃなく地球の事にまで思いを巡らせて…
偏った田舎に住む者として色々考えさせられました。

あと、オーストラリア英語って独特なのが改めてわかりました。

最近のオススメ映画は?と聞かれたら
この映画を進めたいと思います。
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