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裁かるゝジャンヌのkyokoのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
5.0
恐怖、驚愕、とまどい、疑念、悲嘆、信心と救済……ルネ・ファルコネッティの震える瞳に次から次へと映し出される感情が生々しい。私には怒りは見えなかった。一瞬見せた不敵な笑みにぞくり。
圧倒的顔力とリアリティ(かっさかさの唇はほんとに病気かと思った)は35歳にして19歳を演じていることに1ミリの違和感も持つ隙を与えない。
男たちのひそひそ話、拷問隊の謎のツンツン、司教の企み…サイレント映画が付けられる字幕に限界があるゆえ、まったく字幕がないまま進む場面も多いけれど、彼らの顔もまたすべてを物語る。
聖体を授けられたジャンヌを見るコション司教の悔し顔が露骨で思わず笑ってしまった。

驚異のアングルの連続にまだこのような映画体験ができるのかと高揚し安堵する。
カロル・モサコフスキのオルガンも素晴らしかった。
民衆の怒号とともに前日に観たデュモンの『ジャンヌ』は綺麗さっぱり消え去ってしまったけどまあいいか。


イエスの化身のごとく、最後の最後まで現れる蠅。
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