TaichiShiraishi

ONODA 一万夜を越えてのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

いまさら小野田少尉の話?という気もしたが、見てみたら戦争の狂気の弊害を一番残酷な形で被った人物なのに、決して彼の人生を悲惨一辺倒で描いていない、それでいて彼個人の罪も描いている非常にバランスのいい作品だった。3時間近い上映時間にもしっかり意味があるし、飽きさせない娯楽映画としての工夫も多数ある。



何よりも小野田役の津田寛治と遠藤雄弥、その他仲間の兵士役の松浦祐也、カトウシンスケ、井之脇海ら助演俳優たちが素晴らしい。体つき込みで極限状態で戦う兵士たちを体現しつつ、どこかあの生活を子供の秘密基地づくりの延長みたいな雰囲気で楽しんでいたり、はっきり言わなくても仲間を大事に思っているさまが絶妙に表現されているし、彼らの日常の積み重ねでどんどん観客も登場人物をいとおしく思え、同じ年月を過ごしているような感覚を味わえる。それゆえに時折挟まれるポリコレ的にはアウトな行動も「自分ならどうだろうか」と現代人目線じゃなく考えられるのがよかったと思う。



日本兵だからどうこうではなく世界でも類を見ないような数奇な人生を送った人物だけにフランス製作の外国人監督の外国映画として作るバランスもベスト。見終わったら誰もが小野田という男について、陸軍中野学校について、ルパング島について、あの戦争について考えを馳せ調べずにはいられないだろう。
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