かじドゥンドゥン

ONODA 一万夜を越えてのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
3.0
太平洋戦争で、高所恐怖症を理由に航空隊から陸軍への転属を余儀なくされた小野田は、何があっても生き延びて情報工作などに従事するための特殊訓練を受ける。

その後、フィリピンのある島に派遣された小野田は、すでに配置されて久しい年長で経験豊富な兵士達を指揮し、島で援軍を待ってゲリラ戦を展開する使命を負っている。特殊訓練での教え通り、有能で信頼できる精鋭に絞って、主力4名で行動を始めた小野田だが、叩き込まれた猜疑心と生き延びるべしという使命感があだとなり、戦争は終わったという呼び掛けを信じることができぬまま、戦後30年近く、存在しない敵に怯えながら、フィリピンの森で潜伏生活を続けた。仲間3名はその間に死亡した。

最終的には、なかば都市伝説と化していた小野田の生存を信じてやってきた一青年に発見され、訓練時代の上官・タニグチが読み上げる時代錯誤の命令通達を受けて、ようやく小野田は終戦を信じる。天皇から賜った銃を、小野田は最後まで使用可能な状態に維持し続けていて、数十年遅れで再生された玉音放送に耳を澄ました後、彼は黙って銃弾を抜き捨てる。

タニグチを演じるイッセー尾形氏の演技にとりわけしびれた。彼の存在する空間は、声を発するまでもなく、たちまち性質を変えてしまう。