りっく

アメリカ THE MOVIEのりっくのレビュー・感想・評価

アメリカ THE MOVIE(2021年製作の映画)
3.4
https://www.shimacinema.com/2021/07/01/america-the-motion-picture/

アメリカ建国にまつわる、血みどろでバカバカしい歴史を過激な描写で描いたNetflix初のR指定オリジナルアニメーション映画。課税しまくるイギリスのベネディクト・アーノルド統治下でリンカーンの遺志を継いで独立戦争にむけて革命の同士を集めるワシントン。射的の名手・アダムス、馬乗りのリビア、中国系移民の科学者・エジソン、そしてこの地を熟知する先住民・ジェロニモ。それぞれがガジェットを駆使しながら、スーパーヒーローばりに敵を八つ裂きにしていく。

アイアンマンやドクター・ストレンジ、マイティ・ソーといったアベンジャーズ的なノリで進行しつつ、ミッション・インポッシブル、ビバリーヒルズ・コップ、スター・ウォーズ、ロボコップ、ライオンキングといった映画のパロディも随所に散りばめられるのは純粋に楽しい。特に父の桜の木を切ったチェーンソーを両手に振り回す主人公の脳筋っぷりが、声を務めるチャニング・テイタムにピッタリとハマっている。

またアメリカ独立革命の象徴のひとつであるボストン茶会事件を揶揄して、植民地の人間たちが実験台として紅茶漬けされることで英国人になる怪しげなラボ、錬金術で弾丸を作るためにティーパーティーに潜入して大量の銀のスプーンを盗み出す作戦、そして上空から紅茶ではなくビールが降ってきてアメリカが勝利に酔いしれる終盤のカオスっぷりも面白い。

それでいて法の平等のもとに、これから独立宣言をする矢先に、奴隷や女性、同性愛者、先住民といった人々がお互いの多様性を認め合うこともなく、結局ひとつにまとまらず新たな殺し合いを始めるさまをヤレヤレと見つめるワシントンの表情こそが、現在も続くアメリカの気分なのだろう。
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