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殺人鬼から逃げる夜の8637のレビュー・感想・評価

殺人鬼から逃げる夜(2020年製作の映画)
3.6
化け運持ちの二人が追って、逃げる。奥から追うワンショットが格好良い。主演のチン・ギジュは殆どを声以外で表現していながらこの存在感。
殺人鬼の元に成り立つ"静寂の恐怖"にはエンドロールまでビクビクした。ワンシチュエーションは飽きるという自分の勝手な印象を覆してくれた。
フラグ祭りの中に隠れるオマージュにも興奮。

逃げる主人公は決して弱くない。障がいを持つことが"強さ"として、生きる術を持つことになる。余裕無いのに人助けまでしてしまう。観客はどうしても希望を委ねたくなる。
殺人鬼には演技の仕方がある。善を装って、更には煙草までねだる。スリラーの爽快感を上回る醜悪。その場に任せて人を信じきってしまうと、そこは彼の独壇場になっている。

"聞こえる"と"聞こえない"の分断という演出も映画として面白い上に、容易に社会的なメッセージを放つ。アフタートークの高橋諭治さんの話で納得しまくった。街や警察、人を善と捉えられずイライラする。その感情は果たして映画の面白さに向けてなのか...
これを少しの社会派として、心に留めておかなければ。
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