九月

わたしは最悪。の九月のレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.2
これは紛れもなく自分だ!と全面的に思ったわけではなく、そして途中までは自分の思うままに人生を謳歌しているように見える主人公が羨ましくもあったけれど、現代を生きる一個人として共感することが多かった。
伝わってくる感情がどれも居心地が悪くなるくらいに分かってしまい、それは章が進んでいくごとに大きくなっていって、最後まで観て、何とも言えないしんみりとした気持ちに包まれている。

仕事や家庭など、大きく言えば生き方そのものの選択の幅がずいぶんと広がっているように感じる今日この頃。自分の親くらいの世代と比べると、何歳までに結婚・出産した方がいい、とか、自分はこの仕事をしなくてはならない、とか、そんな縛りを感じることはあまりないし、他人のことに口出しする人も少なくなってきていると思う。自由で生きやすいようにも思えるけれど、裏を返せば、いくつも無限にある選択肢の中から自分で選んでいかないといけない。そして、人生において何かを選ぶということは他方を選ばないということ。
アクセルやアイヴィンとの関係を見ていても、ずっと変わらない同じ気持ちでい続けることはできないと改めて感じたし、選ばなかった方が気になるもの。
主人公のユリヤのように、あれもこれもと目移りするというよりかは、何かを失うのが名残惜しくて大きな決断ができない私は、この映画を観て足元がぐらつくような感覚になった。

自分の人生を全て知っているのは自分だけ。肯定も否定も、できるとしたら自分だけだけしかいない。

一体どんな結末が待ち受けているのか見当もつかなかったけれど、序章と12の章、終章を見守った後のラストシーンがとても良かった。ショッキングな描写だったけど、ユリヤはどこかで安堵しているようで、解放感で満たされているようにも哀愁が漂っているようにも見えた。
九月

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