ブルームーン男爵

エッフェル塔~創造者の愛~のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

3.8
パリの有名なスポットのエッフェル塔。エッフェル塔を設計したのはギュスターブ・エッフェル。彼を主人公に、エッフェル塔が完成するまでの苦難と、結ばれなかった最愛の女性アドリエンヌへの愛情を交えながら描いている。

ラブストーリーの大部分が創作であるが、アドリエンヌは実在しており、婚約破棄されたことなども事実だそうだ。エッフェルの息子と、アドリエンヌの姪が結婚しているらしく、二人が再会していた可能性も高い。ただ他のレビュワーの方にもあるように、エッフェル塔建設の苦難よりも、創作ラブストーリーのウェイトが重い。エッフェル塔建設の苦難はご都合主義で流れていってしまった感がある。

ただ全体的に上質な雰囲気であるし、当時のブルジョワの暮らしぶりだったりもリアル(なお、よくみると手紙がチラっと映ったとき、アドリエンヌのミドルネームに”de”がついていたので貴族のよう)。また、当時のフランスは普仏戦争でプロイセンに敗戦したことなどの歴史的背景も言及されているが、当時のフランスの置かれた立場も興味深い。パリ万国博覧会で国の威信にとってもエッフェル塔は重要だったのだ。しかし、映画でも描かれるが、エッフェル塔は当時、景観論争で酷評されていた。ここらへんの議論は京都の京都タワーの景観論争にも通じる。

東京タワーもエッフェル塔をオマージュしたものであり、日本人にもエッフェル塔は身近である。エッフェル塔とその設計者の秘話を垣間見える良作だと思う。エッフェル塔はアドリエンヌの頭文字の”A”の形に見えるというが、言われてその通りだ。エッフェルの思いが塔のデザインに反映されているのかもしれない。