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The Son/息子のGreenTのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
2.0
ピーター(ヒュー・ジャックマン)はマンハッタンの高級弁護士。めちゃモダンなアパートメントに住んでいる。妻のベス(ヴァネッサ・カービー)は産まれたばかりの息子の世話で疲れ果てているが、ピーターとワインでナイトキャップは欠かせない。

・・・また年齢の釣り合わない「映画でしかあり得ないカップル」だよな~20歳差だよ!とか思って観てたら、ローラ・ダーンが元妻らしい。この元妻ケイトは、ピーターとの息子、17歳のニコラスが、学校には行ってないし、一緒に暮らしていて怖い、自分一人ではもう抱えきれないと、ピーターに助けを求める。

ピーターはワシントンDCでの夢のハイプロファイル・ジョブを得る最終段階に入っていて忙しいのだが、息子を見捨てた父親と思われたくなくてニコラスに会いに行く。するとニコラスは泣きながら母親とそりが合わない、お父さんと暮らしたいと言う。

メンヘラのティーンエージャーを若妻と乳児のいる家庭に引き取って来る・・・・これってもしかしてスラッシャー映画?とかこの辺で思い始める・・・・。ピーターはワーカホリックで出張ばかりしているし、ある日出張から帰ってきたら妻と赤ちゃんが殺されてるとか?!

タイトルからめちゃくちゃ退屈なヒューマンドラマかと思ってたのでこの展開にちょっと興味が魅かれる。

このニコラスのキャラが全く共感できない。要するに尊敬していた父親がお母さんを捨て、若い女と結婚した。そのせいでお母さんからお父さんの悪口を聞かされ続け、愛と言うものが信じられなくなった。それで鬱病みたいになってるらしいってことなんだけど、屁理屈だけは達者な被害者意識の強い子でげんなりする。

でもピーターもひどい父親なんだよ。ガキの屁理屈を真に受けて怒鳴り返したりするし、なんか上から目線の、嫌な父親。

とか思ってたら、ピーターの父親もそうなんだよね。アンソニー・ホプキンスが演じているんだけど、ピーターがニコラスくらいの年齢の時、ワーカホリックで妻が病気の時も仕事か社交をしていて全く面倒見なかった。そういう父親になりたくないと思ったピーターは、トラブルを抱えているニコラスのケアを優先して、ワシントンDCのドリーム・ジョブをあきらめると父親に言う。

するとこの父親(ホプキンスね)、「なんだよ、俺が悪い父親だって思い出させに来たのか?自分の方がいい父親だと。褒めて欲しいのか?」とパチパチパチと拍手する・・・・

ずいぶん意地悪なこと言うなあって思ってたらさらに、「俺をモンスターにしたいならそれでもいいけど・・・・。父親に優しくしてもえらえなかった、母親も苦しめられたって、50歳にもなって何言ってんだ」

で、"Just fucking get over it!" ってあのハニバル・レクターの表情で言ったときは爆笑した!!!

私はこのお父さんに賛成ですよ。

でもこの映画のポイントは多分、離婚したことが原因で息子がこんな風になっちゃって、親はすごい罪悪感を感じる・・・・。自分の生きたいように生きたいけど、それが息子を鬱病にしてしまったって、まあそういう親のジレンマ?も描きたいのは解るんだけど、なんかこの両親バカすぎるって言うか、息子に振り回されすぎで同情できない。

そもそもさあ、お母さんが離婚を乗り越えられてないんだもん。まあ、旦那が若い女に走ったってのがめちゃショックなのは解るけど、お母さんも "just fuckin' get over it!" だよ!

監督・共同脚本のフローリアン・ゼレールってあの『ファーザー』の監督・脚本の人で、この作品は『ファーザー』のプリクエルらしい。『ファーザー』では認知症を描いていたので、こちらでは息子の「両親離婚のトラウマによる鬱病」を描いているらしい。

しかし私は本当にこの17歳のニコラスに「甘えてんじゃねえ~」ってイライライライラした。17歳なんてもういい年なんだから大人になれ!両親の離婚くらいでメンヘラになるならこの世で生きていけないよ、どうせ。なんか劇中でニコラスが「どうしてみんな平気な顔して生きていけるのかわからない」って言ってるけど、正直「まあ君にはわからないよ。もう死んでいいから」って思っちゃった。

しかし、本当にメンタル・ヘルスやられている人はもうそういう風に理論的に考えられないってことらしいから、しょうがないの?私が冷たい人間なの?って思ったけど、iMDbの投稿を見ると「精神科にかかっていたことあるけど、この映画は精神病を表面しかなぜていない。ニコラスに共感できない」ってのがあって「やっぱそうだよね」って思った。

逆に「心の琴線に触れた」って言っている人も多いんだけど、正直言ってこの映画を観てそう感じる人は被害者意識強い人たちなんじゃないかなあと思った。
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