Yone

私ときどきレッサーパンダのYoneのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
4.0
✒️ソウルフルワールド、あの夏のルカ
とピクサーの最近の作品は劇場公開がされないのがもどかしいくらい、個人的には傑作揃いの中、予告を見た時は構えてしまいました。しかし、本編序盤でその不安は吹っ飛びました!
子供向けの作品という言葉で間違ってないのですが、ピクサー作品は、ながら観で終わらせて良い作品というのは、個人的にはないと思っています。
もちろん、ながら観でも楽しい作品も大切なのですが、ピクサーの作品は子供に向けるからこそ、「しっかりとつくろう」という意志が感じられます。そういう意味での子供向けの作品になっています。

✒️あらすじ
舞台は2000年代初頭。主人公はカナダのトロントのチャイナタウンに暮らす、13歳の女性、メイメイ。メイメイは自分のことだけでなく、親の期待に応えようと、成績優秀で、親の理想とする子供でいようと心掛けている。一方で、アイドルの4タウンにハマっているが、母親は派手な格好のアイドルをよく思っていない。しかし、ある出来事で、感情をコントロールできず、悩み抱え込んでしまう。次の朝、メイメイは大きなレッサーパンダになっていた‥

✒️総評
構造的には、ピクサーのこれまでの作品と同じだと思います。わかりやすい起承転結の物語。主人公の話を追っていくと、転の部分で物語の大きな指標が一度崩れる。そこで、今まで積み上げてきた伏線の部分が浮き上がり、そこが作品の一番伝えたいメッセージ、テーマの部分となり、結でまとめられるという感じです。この構造をしっかりとやってくれると、わかってても、リズムが単調にならないため、一定のクオリティを保ってくれます。
面白かったかどうかでいうと、最高でした!自分映画でした!最高の理由はいろいろありますが、冒頭からメイメイを自分に投影できたことで感情移入がしやすかったことがなによりの理由だと思います。

✒️コンプレックス
メイメイはレッサーパンダになることが、コンプレックスになってしまいます。自分にも同じ経験があったので、とても感情移入できました。見た目に関して、コンプレックスができたことがあり、母親も心配してくれて、いろいろ助けてくれたのですが、いつしか自分よりも気にするようになって、「気にかけてくれるのはありがたいんだけど、そんなに今の自分がいけない?」と思ってしまうこともありました。
一方で、意識か無意識か、友達は普段通り接してくれて、そっちの方がありのままを受け入れてくれている気がして、すごく嬉しいのです。メイメイも同じように、友達によって救われます。この作品をつくった人の中にも同じ経験をした人がいるということだと思うし、誰しもがコンプレックスを持っていて、誰かに救われている、誰しもに当てはまることなのかもです。

✒️親とのコミュニケーション
自分もメイメイに似た子供だったと思います。喧嘩するのが得意じゃないから反抗せず、言いたいこともあるけど、我慢するのが正しいことだと。今でも、それは間違いだとは思わないけれど、自分のことも大切しなくちゃと今は強く思います。だからこそ、最近はありのままでいられている。
けど、その分わかってもらえないことも増えた気がします。映画を観るのが好きな自分ですが、母親からは「また映画、暇なの?笑」みたいに言われると、
少し、うっっ!てなります。自分は映画を観たいから、やるべきことをして、時間を空けてるのに!って感じです笑
自分は親になったことがないので、どうしても子供側の意見一辺倒になってしまうのですが、この作品は親の話も描いてくれます。それがなにより重要な要素だと思います。メイメイの母親も自分の母親に対しての確執があります。ただ嫌がらせをしたくて、子供の趣味を否定しているわけじゃないのです。全てをわかってくれることなんてないけど、親には親の考えがあって、それを想像してみることも大事だと教えてくれます。理解できなくても、しようと試みることがお互いを大切にできる気がします

✒️ただ、かなりミニマルで個人の話でもあるので、同じ境遇でない人にとっては
ハマらない作品でもあると言う感じです。
ミニマルなテーマを扱うのは、かなり覚悟がいることであり、偶然にもハマれた自分は幸運であると思います。
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