前髪メガネ

私ときどきレッサーパンダの前髪メガネのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
3.8
感情爆発でモフモフに!!

伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、親の期待に応えようと頑張るティーンエイジャーの少女メイ。母親の前ではいつもマジメで頑張り屋でいる彼女だったが、本当は流行りの音楽やアイドルも大好きで、恋をしたり、友達とハメをはずして遊んだり、やりたいこともたくさんある。母親の前で本当の自分を隠す日々を送るメイは、本当の自分がわからなくなり、感情をコントロールすることができなくなってしまう。悩んだまま眠りについた彼女は、翌朝目を覚ますと、なんとレッサーパンダになっていた。突然のことに驚くメイ。しかし、その変身の裏にはある秘密があった。


コロナの影響でストリーミング・スルーになってしまったPixar新作。
トレーラー公開時から今までにないストーリーの雰囲気に楽しみにしていたのにまたもや配信だけになってしまって残念。

自分らしく、自分で好きなものを選んで生きているつもりの中国系カナダ人メイ。
最近のディズニーはポリコレを強意識して白人以外を主役や主要メンバーにしていますが、今回は中国系。
物語としても先祖を思いやる家系だったりパンダ(レッサーパンダ)に変身したりとちゃんと物語にも中国系の必要性がキーになっていたりします。
それもそのはず、本作の監督脚本を務めたドミ・シー監督は中国生まれのカナダ人。
以前監督した『バオ』も中国系の物語。こちらも家族の関わり合いを小籠包を擬人化して描いていて面白かったので是非。
中国にルーツがある方が作るから偏見的過ぎないように思えた。

本作は中国ルーツも関わりますが、本筋は思春期の不安定さや自我の解放がメインテーマになっており、母親の期待に応えないとという気持ちと自分が好きなものを胸を張ってちゃんと好きと言いたいという気持ちがぶつかって感情が爆発した時レッサーパンダに変身してしまうという物語。

レッサーパンダになるのはファンタジーではあるけど思春期の秘め事や思い描いた自画像の乖離、親からの干渉だったりと誰しもがあの頃こんな事あったなぁが本作の中にあるのではないでしょうか。

感情的になる事でレッサーパンダに変身することを悪としてきた家族と、その姿も好きでいてくれる友達。
家族は家族で自分がそうだったかとか大人になるためだからとかの理由からレッサーパンダを抑え込む、感情を押さえつけようとするのもメイを思っての言動だと思うと考え方の違いなだけで責めきれない。。
本作には所謂"悪"がいなく『あの夏のルカ』もそうだけど、風習や気持ちの違いから起こる摩擦を描いていてそこからもメイだけでなくPixar、ディズニーの変化が伺える。

レッサーパンダになる事も悪い事ではなく、個性として、それも含め自分として愛そうとするメイの姿はとても良い。

恐らくSNSの無かった時代設定にしたかったからか、本作の時代背景は2001年なのですが推し活に心酔する描写は今風とも言えるかも。
大好きな4☆TOWNのライブに行きたいメイたちやレッサーパンダにモフりたいなど今でも通じていて古く見せないのは上手い。
あと母親や叔母や祖母も緑色の服を着ているのだけどこれも赤いレッサーパンダを封印したことで赤の反対色の緑になってかつ竹林にもかかっているのま上手い。


2024年に短期間ではあるけど劇場公開が決まったのは嬉しい。
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