夏と花火。
ノスタルジーの映画なので晩秋に公開するのはピッタリです。
自分も学生時代に友達と花火をしたなあとしみじみ思いながら観るわけです。
ノスタルジーは自分への憧憬です。ナルシシズムが寄り添っています。自分が好きであればあるほど楽しめます。
日常の中でよくポエムなことを考える人にはピッタリの映画です。僕もですけど。
きれいなだだっ広い空間の中でひとり。
もしくは君と僕。たまには友人も。
そういうイラストを見て、詩情あるなあと思ったり。
何気なく死にたいと思ったり、やっぱり生きるのいいなと呑気に思ったり。
映像による詩なんですね。
この映画にはつっこみどころに見える箇所がいくつもあります。
成績優秀であるけれどそれには価値を見出さないところ、心霊スポットとしてSNSで有名だけど誰もいない廃飛行場、警察へ通報すべき出来事の扱い。それら目に映るすべてのことはポエム。メタファー。描きたいコンセプトに忠実。リアリティはあえて削ぎ落とす。
監督は自分に求められていることをやり切ったと思います。
初監督作品は作家性が出るとよく言われることを思い出したときに頭に浮かんだのですが、
「自分は勉強もできたけど絵描きになって成功したよ=俺スゲー」という嫌な解釈もできてしまうのが損してると思いました。脚本がそうだってだけかも知れないけど。
その他、面白かったところ。
・飛行機視点の着地シーン
・性的魅力や恋愛の希薄さ
・影との戦い。この映画観て救われる人もいるかもね
・いじめっ子に言い返すところが名演。アイテムの使い方も良い。
・若書き感
もうちょっと頑張って
・花火シーンで主光源を明滅させて
・「作り手が何を欲望しているか」が見たかった。