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最後の決闘裁判のhynonのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
3.9
ある事件をめぐって関係者3人の見解が食い違う。
はたして真相は…?

あぁ、あの人もこの人も。
当事者も、傍観者も。
「みんな愚かね」、という一言に集約される。

こういうとき、男は頭に血がのぼり、プライドや闘争心ゆえに的外れな行動をとるが、女は心のケアを求め、そばにいて優しくして欲しい、という男女間のズレは、ファルハディ監督の「セールスマン」にも通じるものがある。

それにしても驚きなのは、この映画で描かれる、この時代、この地特有の価値観や信仰やルール。

近代医学が発達する前に主流であった「四体液説」をはじめ、女性は「頂点」に達しない限り妊娠しない、とか、妻は夫の所有する財産の一部とみなされる、とか、決闘で勝って生き残った方が神が味方する正しい者である、とか…
呆れ返るような理論が、当然のこと、絶対的なもの、として信じられていたのだ。

これには、もはや驚きを通り越して憤りを感じた。

医学や科学の常識も、法律も、価値観も、時代が変われば変わってしまう。

いまの時代から見ればナンセンスだとしても、かつて、それらを信じた人たち、それらに命をかけた人たち、翻弄され苦しめられた人たちがいたのだ。
なんともやるせない。

決闘シーンの迫力も素晴らしく、まったく長さを感じさせない2時間32分でした。
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