みかぽん

スープとイデオロギーのみかぽんのレビュー・感想・評価

スープとイデオロギー(2021年製作の映画)
4.0
皆さんがもやもやした薫さんのお葬式見学会激怒パート。個人的には、人間は必ず死ぬのだから、自らの最後をどう弔って欲しいかを自らで考え、選択出来るのは良い機会と思うけどなぁ。
もしうちの母に〝お葬式見学会〟の誘いが届いたら、行っといでよ〜、と勧め、母も、はいよ〜、とか言いそうだな😅。万一、チラシ内容にヨヨとなったら、お母ちゃん、子供に好き勝手されるのはヤでしょ?今のうちに考えとかないと勝手に色々やっちゃうよ?と逆に諭し(脅し?)そう😅。
あと私自身、近所で棺桶に入ってみるイベントなんてのがあり、手上げして横になってみたことがある♪だって、死んだら入棺の感触なんて分からないもんね。と言う訳で、中は狭いなりにもなかなかの寝心地だったかも。そして、あぁこのまま燃やされて現世から消えてしまうのか、としみじみもしたりして。
戻って薫さん、自分に酔っている風な激昂が私にはジャーナリストらしく映んなかったけど、きっと薫さんは新しく家族になってカッコ良くて頼りになる夫を奥さん見せたかったのかな。と思えばちょっと可愛らしい。←エラソウ…。
あ、すみません。このドキュメンタリーはお葬式がテーマじゃないんです💦

大義のために、祖国のために息子たちを北朝鮮に送り出した親心はまるで出兵。しかも戦争なら生きていればいつかは親元へ戻って来れるのだけど、親分があれではそれも叶わず。しかも父親が朝鮮総連の幹部であれば親子共々その役割を全うしなくてはならなくて、結果、あろうことか長男は当地で心を病んで命を落とす。
ここでお詫びしたいのだが、正直、私は今まで朝鮮総連の役割とか、帰国事業の意味合いについてを冷やかに傍観していた。しかし今、本監督のご両親の仲睦まじさも、一人娘になった彼らの娘への思いも、娘の結婚を心の底から喜ぶお母様の笑顔も、ご次男たちへ年金をすり減らして行う送金も、作品鑑賞の前と後では心にかかる重さが全く変わってしまった。
常日頃から、物事は結果でなくプロセスで理解しようと心がけてきたつもりでいても、いかに自分自身が物事を切り取りにして判断していたかを思い知らされ、それを悔いる衝撃の物語だった。

私たちの先祖が加担した戦争で多くの罪なき人々が犠牲となり、彼らは独立の喜びも束の間、今度は大国の代理戦争に巻き込まれ、そのまま思想弾圧を受けた末に同胞によって家族、親族、恋人、友人までもを虐殺されたこと。そうした地獄から命からがら逃れる先がかつての敵国しかなく、しかし当地ではよそ者として冷たく排除される屈辱の中を耐え忍び、懸命に生きた人々。
彼らが自助組織を立ち上げ、共に祖国復興のために力を尽くし、子どもたちにもその歴史を伝え、同じ立場にある仲間たちと肩寄せ合うことは至極当然のことだ。
しかし当事者たちの高齢化は進み、文在寅の謝罪ももはや母の心には届かない。

今、本作を思い返すだけで再び込み上げてくるものがある。
この歳になっても、世の中には知らなくてはならないことがあまりに多くありすぎる(恥)。。
みかぽん

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