岩嵜修平

アステロイド・シティの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.7
いつも通りの大好きなウェス・アンダーソン監督作ではあるが、過去一、頭の中に入って来なかった。前作における「雑誌」に続き「演劇」というフォーマットを活用して、1950年代アメリカの暗部を実在の俳優たちをモデルに描くが、作中で語られるように「芝居が理解できない」。

ドキュメンタリー番組の中で扱われる演劇作品を投影した映画というメタメタ虚構だからこその、精密ながらポップなセット(バービーランド以上に作り込まれている)で構築された世界と、非現実の連続を淡々と過ごす登場人物たちは魅力的ながら、それぞれの関係性は連続して交わらない。箱庭の中の人々。

大人たちが異常な現実をひた隠しにして現状維持を目指す中、天才少女・少年たちが、その秘密を露わにしようと文字通りひた走るのが興味深い。その街にいる時点で、大人は、秘密に加担している。核実験とUFOの裏にあるもの。歴史上の不都合な真実。抗うのは次世代。でも、それで良かったのだろうか。

テネシー・ウィリアムズからのアーサー・ミラーからのマリリン・モンロー役でスカーレット・ヨハンソンが出演してるとか、思いの外、演劇の要素が強い映画でもあるので、劇評家などにも評して欲しい作品。その他のキャスティングも見事の一言。子役たちがひたすら可愛かったし、マヤ・ホークも最高。

こちらを聴いた後に、町山さんのオンライン登壇付き特別上映会へ。全ての構造を知った上で観ると、マーゴット・ロビーの出演シーンで泣けちゃう。ウッドローはウェスなんだな。

聴く映画秘宝・町山智浩のアメリカ特電・第21回『アステロイド・シティ』
岩嵜修平

岩嵜修平