岩嵜修平

美と殺戮のすべての岩嵜修平のレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
3.6
奇しくも、国立西洋美術館でのデモ直後に公開されることに意義を感じる映画。デモ自体についてはモヤっていた(スポンサー視点では損が無いと思った)自分が、その背景と先を見れていなかったと気づけた。何もしないでいられない過去の蓄積と、加害者に対する意義ある抗議の必要。

単純にオピオイドの問題にフォーカスしたドキュメンタリーにも出来たであろうところを、ナン・ゴールディンの半生を追う作品にしたのは正解。家族への愛がありながら家族一人一人が問題を抱え、親のために姉を失った過去が、拡張家族を求め続けた彼女の人生につながる。今なお、作品が社会化し続ける。

パンフレットでも言及されていたが、運動自体を作品として残すことに意義があるし、それが結果として、サックラー家につながるまでを映せたのが凄い。『シチズンフォー』でスノーデンに迫ったローラ・ポイトラス監督の粘り勝ち。あと、渋川清彦の寄稿に驚いた。まさにナンがKEEの生みの親なのか。
岩嵜修平

岩嵜修平