岩嵜修平

ブルックリンでオペラをの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

ブルックリンでオペラを(2023年製作の映画)
3.8
たまに、こういう思いも寄らない傑作に会えるから映画を観続けるのは止められない。予告編のイメージから全く異なる予想もつかない展開の連続。ラブコメとして笑いながら楽しめるけど、それだけに終わらない人物描写の深さ。見事にピースがはまるラストの気持ち良さと解放。

大人になると誰しもが、大なり小なり何らかの"病"を抱えていて、誰しもが大切な人にも言えない秘密を抱えていて、その全てを改善するのが、聡明で勇気ある(向こう見ずな)若者たちというのは、あまりに理想的で作り物感も強いが、映画でしか描けないこと。正直に想いを伝えることの大切さが伝わる。

キャストも絶妙。誰1人として、彼の身長に言及しないし、息子の人種に触れない。それぞれが出演した過去作も含め、ピーター・ディンクレイジやアン・ハサウェイやマリサ・トメイ(メイおばさん!)が演じる意義がある。現代オペラシーンは笑うしか出来なかったが、プロの技を観られて良かった。

あまり監督を意識してなかったけど、レベッカ・ミラー監督はアーサー・ミラーの娘さんでダニエル・デイ=ルイスのパートナーなのね。撮影のサム・レヴィはケリー・ライカート、ノア・バームバック、グレタ・ガーウィグとタッグを組んで来た人で、音楽のブライス・デスナーは『カモン カモン』の音楽も!

正直、パンフでの宇野維正さんの寄稿や、ジェーン・スーさん×高橋芳朗さんの記事が無ければ観てなかったので感謝。パンフの寄稿も、他に、大九明子監督、小室敬幸さん、小柳帝さんなど信頼の置ける方々。ブルックリンや現代オペラについても学べてありがたや。
岩嵜修平

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